自前救命講習開催のすゝめ

乳児人工呼吸の自主学習キットで保育の合間の練習を日課にしよう

保育園に救急救命マネキンのミニベビーを揃えて人工呼吸の練習を日課にしよう

 保育園で心肺蘇生の練習をしたくても高価なマネキンは買えませんでした。また安価な救急救命マネキンもどき人形では胸を押すことだけしかできませんでした。そんな課題を解決してくれる、手足もついてリアルな乳児の形状をしている、安価で誰でも手に入れられる、子どもの事故に関わる保育者にとって人工呼吸の練習ができる「ミニベビー」が登場しました。

救命救急の講習会に参加したものの、時間をかけて心肺蘇生の練習ができなかった、まして乳児用のマネキンに触れられなかった、人工呼吸の練習なんてしたことがない。そんな状況をひっくり返す(かもしれない)、ぜひ触れてみてほしいミニベビーをご紹介します。

乳児を見守る保育士の保育安全向上につながる

 ミニベビーはネットなどで個人が手軽に購入できますが、販売当初から保育園や幼稚園など乳幼児が多く過ごす環境での研修にも積極的に使われてきており、安かろう悪かろうにならない十分に質の高い練習ができることが実証された携帯性に優れたマネキンです。

「(2012年)2月に完成したばかりの人工呼吸ができるタイプの乳児マネキン」で「当日受講する100人に一人1体ずつ用意」できるコストパフォーマンスをもっているだけでなく、品質的にも米国における「小児科学会や心臓協会の認定」機材だということです。

「赤ちゃんの心肺蘇生法知って 金大小児科医ら4日講習」
 金大の小児科医らが市内の保育士、幼稚園教諭を対象に、日本蘇生協議会と日本救急医 療財団の合同委員会が昨年示した新しい心肺蘇生法の手順の周知に乗り出す。(中略)
講習会では、普段から乳幼児と接する保育士らに、新しい心肺蘇生法の手順と共に、人工呼吸の重要性に理解を深めてもらう。小児に多いとされる窒息や溺水(できすい)による心停止の場合、胸骨圧迫だけでは効果がほとんどない。人工呼吸を組み合わせることで、1カ月後の社会復帰率は胸骨圧迫のみの1・6%に対し、7・2%に大きく伸びる。
(一部当サイトの表現上、赤字にしました)

窒息や溺水による心肺停止は人工呼吸が効果的

『小児に多いとされる窒息や溺水(できすい)による心停止の場合、胸骨圧迫だけでは効果がほとんどない。人工呼吸を組み合わせることで、1カ月後の社会復帰率は胸骨圧迫のみの1・6%に対し、7・2%に大きく伸びる』とあるように、ミニベビーはお財布にやさしく、人工呼吸の技術習得が必須の保育士や幼稚園教諭にとって役立つマネキンだということができます。

これまで、外部の講習を受けに行く時間がなかった?外部から講師を呼び寄せているが、なかなか都合の調整が叶わず開催できる機会が少ない?もし講師が「人工呼吸は必要なくなった」と言われて十分な練習ができていなかったなら、保育の合間に自主練習してみませんか。

ミニベビー購入で救急救命マネキンを比べてみた

アンとベビーのミニショップ(閉鎖されました)
ミニベビー 自宅でDVDを見ながら乳児CPR(心肺蘇生)を気軽に学べる【乳児CPR学習キット】

 安価であることは商品ページを確認していただければ判ります。保育園や個人で取り組めるように、いろいろパッケージ化されていることも判ります。しかし、これまでの研修用の救急救命マネキンと比べての使い心地までは商品ページだけでは伝わらないので実際に買ってみました。(追記:2014年現在では、5セットパックも購入して実際の研修に使用しています)

2015年6月現在、こちら「救命コム」で購入できます。(2018.3.22 再追記。蘇生ガイドラインが2015年版へと改訂された折に輸入販売が停止されて、もう手に入らないものと思いましたが、販売が再開された模様です。未確認ながらトレーニング用DVDの内容は「ガイドライン2010準拠」の古いままであると思われます。しかしガイドラインの改定ポイント、またDVDの構成から見て、そのままであることに大きな問題ないと言ってよいと考えます)

マネキンの置場に困らないコンパクトさ

配達員さんから受け取った最初の感想は、なんといっても軽かったこと。入れ忘れた空箱が送られてきたのかと思うぐらい、箱の大きさと軽さとのギャップ、そして今までのマネキンにもつイメージとの違いがありました。でも実際の中身は以下のような感じで、なかなかリアルです。

個人で手軽に練習できるようにトレーニングを導くDVDなどと一緒に、空気で膨らますビニール製のマネキンがコンパクトに折りたたまれて入っていました。おすすめポイントとしては、人工呼吸に使用される吹込み用の肺の交換分までがちゃんと用意されているところです。アルコール消毒用のガーゼもセットで入っているところが、衛生管理を学ぶ意味でも安心感が高いですね。

【構成品】
マネキン(全長約50cm)、トレーニング用DVD、交換用肺、
マネキンワイプ

ミニベビーの実効性を高めるポイント

 ビニール人形の形状に空気を入れるまでは非常に頼りなく感じますが、膨らますと当り前にパンツをはいた下半身があることで、その「人らしさ」に親近感がわくとともに、リアルな顔つき、胸やお腹の見た目に赤ちゃんの雰囲気が感じられて十分な満足感が得られます。

何より、この手足があるか、ないかというだけで練習への思い入れが全く変わってきます。人間の胸だと設定された機材を指定されたテンポに合わせて圧して、手順だけ覚えるだけの練習をするのか、目の前に見知った子どもの姿を重ねて助けたいと想いを込めて練習するのとでは、後者の練習の方が練習者のモチベーションを高めるとともに質の高い技術が身に付くと考えます。

空気の入れ方に注意は必要だが高いコストパフォーマンス

これまでの講習会で使ってきた乳児マネキン(上)と並べて比べてみると、3カ月児(上)と、新生児(下)ぐらいの差でしょうか。保育園の子どもを思い浮かべるにはサイズが小さいですが、胸の真ん中の押し心地に物足りなさは特に感じませんでした。

胸を強く押すとカチッと音がします。それが強さの目安です。しかし空気の入れ方(ストローをくわえて吹き込んで入れます)が弱いと当然ながらカラダ全体が柔らかくたわむので注意が必要ですが、それを補って余りあるコストパフォーマンスであることに代わりはありません。

蘇生法を学ぶ教材として活用できるポイント

箱の内蓋の取扱い説明以外に詳しい説明書はありませんが、付属のDVD映像の視聴と同時進行で見たままを真似して練習する、アメリカで学習効果の高さが認められた方法で即時はじめられます。日本救急医療財団と日本蘇生協議会(JRC)が作成した蘇生ガイドラインのポイントと手順がギュッと凝縮されて構成されているので、誰でも安心して練習を行なっていただけます。

・DVD(約20分)を見ながら短時間で学ぶことができます。
・乳児のCPRと気道異物の除去について学べます。
・講習会で使用する際も一人一体のマネキンを使用でき、実技の時間を最大限に確保できます。

しかし仕事に必要な知識と技術を身に付けるための研修教材レベルでDVDの出来具合をいうと、残念ながら個人的に体験するにはよい程度の簡易さなので、ぜひ目的に合わせて、DVDは別に紹介する「ファミリー&フレンズCPR」という教材を使っていただくことを強くお勧めします

「ファミリー&フレンズCPRコース」をつかった自主研修のすすめ
 救命救急講習といえば消防署の普通救命講習が有名ですが、指導資格などに関係なく誰でも国際規格の心肺蘇生法講習を開催することができる教材「ファミリー&フレンズCPRコース」をご案内し

人工呼吸は日常的に繰り返しの練習が大切です

 子どもが犠牲となる深刻な事故は、呼吸が止まり脳に酸素がいかなくなって、やがて心臓の動きも止まる窒息や溺水事故が(大人に比べて)多いと報告されています。保育園や幼稚園における死亡事故においても変わりはありません。乳児保育で強く注意喚起されている「乳幼児突然死症候群(SIDS)」も睡眠中の無呼吸状態が発端であって、合わせた対応が求められます。

異常事態の発見が早いほど人工呼吸だけでも回復する可能性は高まります。窒息事故ほか乳幼児突然死症候群であろうと、そもそも保育者はその予防について配慮する必要があります。安全対策が施された環境で保育が実施されなければなりませんが、延長線上にある発生時対応における大切な手技のひとつとして、保育者は人工呼吸ができることが望ましいとされています。

教材もつかって保育園で日常的に訓練する仕組みをつくろう

くり返しになりますが子どもの重篤な事故に人工呼吸は欠かせません。しかし人工呼吸は一度や二度体験したことがあるだけでは、躊躇して行動が遅れてしまいかねません。人工呼吸も繰り返し練習することで身に付けることが大事で、繰り返し練習をするといった意識が現れた保育者の姿は、日ごろから子どもの重大な事故を防いでいく行動にもつながっていきます。

「わざわざ専用の人形を買うことが叶わなかった」、「蘇生法の練習は特別なものなので外部で学ぶ時間をとらなければ行なえなかった」といった事情は間違いなく変わりつつあります。保育者がもつべき知識・技能としてミニベビーだけで、すべてを満たすものではありませんが、こういった教材の導入をきっかけに、さらに保育の安全性が高まることを願っています。

書籍【保育救命】~保育者のための安心安全ガイド~

【読者の声】園で子どもたちをのびのびと遊ばせてあげたいけれど、安全面が気になってしまって、禁止ばっかりを作りがちでした。でも、ここにのっている、ハザードマップを作れば、事前に予防ができそうだし、とっても簡単なので、忙しい私たちでもできそうなので、早速やってみたいと思っています。 怪我の対処法も、チャート式で簡潔になっているのでわかりやすいです。かなりオススメですよ。【評価:★★★★★】

【読者の声】保育現場のケガの手当て、事故対応の決定版といえる1冊。チャート式で、緊急時に何をしたらいいかの判断がわかりやすいと大好評。ハザードマップをつかったヒヤリハットの対応から、不安の大きな保護者対応まで、これ1冊で準備できます。【評価:★★★★★】

  • 筆者紹介
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遠藤 登(安全管理研修担当)

1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始しました。2011年お昼寝中に心肺停止した園児を救うことが叶わず現在の活動に至る。株式会社保育安全のかたち代表取締役/ 保育現場のリスクマネジメントをテーマとした書籍を執筆(単著・共著ほか)

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