発達と保育リスクマネジメント

音声認識アプリを保育事故の状況保存に役立つように改善するポイント

 保育中に子どもの命を失う深刻な事故についての訴訟が起きています。事故が起きた際の保育の過失性を問うことはもとより、事故の前後の状況、特に保育者が事故に対してどのように対応したのか明確な説明が行なわれないために、事実を解明することも大きな目的のひとつです。

集団保育の応急手当 「万が一のとき」の初期対応の手順
 応急手当の基本はケガや病気が悪化することを遅らせたり、手当て開始当初の状態を留めることです。それに加えて、保育者には「保護者の不安を解消すること」が応急手当のゴール到達に求められ

人が忘れる短期記憶と長期記憶の仕組み

保育した側から明確な説明が行なわれないのは、意図的に記憶を隠ぺいや改ざんするケースを除いて、人間の脳がもつ「短期記憶」から「長期記憶」へ記憶を受け渡すメカニズムに邪魔されて、事後に事故状況を記録し直すことが難しいといった可能性も原因のひとつと考えられます。

ナビゲート ビジネス基本用語集の解説
感覚器官が受け取った刺激(感覚記憶)に意識が向けられることにより記憶が保持されるが、その持続時間は数十秒から数カ月程度とされる。短期記憶の容量には限界があるとされ、時間の経過や新たな情報のインプットとともに失われるが、繰り返し呼び起こされた記憶は長期記憶へと受け渡され、一層の記憶が可能となる。
http://www.navigate-inc.co.jp/term/

記憶するときの状況によって全ての記憶を覚えておくことはできません。ならば記録すること自体には手がかからず、保育中の事故にひとりきりで対処しているときから記録をはじめられるツールとしてスマートホンの音声認識アプリを選び、試しながら改善ポイントを考えてみました。

音声認識アプリDragon Dictationをダウンロード

 音声認識機能はiphonなどのスマートホンで標準搭載されるようになってきています。今回、音声認識アプリの利用者評価などを調べながら実際にダウンロードして使ってみたのは「Dragon Dictation」というアプリです。

アプリに向かって文章を読んだ声が認識されて、新たな文章として変換された結果は、ほとんど修正の必要性を感じさせないぐらいの精度でした。

音声認識アプリDragon Dictationの変換能力

「保育園児のための保育安全のかたち」の『かたち』という平仮名が漢字に変換されたのは問題なしとして、「保育事故と応急手当研修、専門性の高い子どもの見守り方」の『研修』が犬種に置き換わったり、『コース』が講師に置き換わるなど元の文体を知らないと混乱を招く可能性は残っています。

声の認識間違いはマイクの機能の精度を上げたり、しゃべりかけ方に慣れれば大きな問題ではないように思います。一時的なメモをとって、例えばメールとして後から文章に仕立て直すのであれば十分な機能をもつアプリです。

保育事故の状況保存に役立つ音声認識アプリ

 病院の診療記録の電子保存に代表されるように、事実を記載し残していくことが目的の記録においては「真正性の確保」が必要とされ、文章の修正ができてしまうままでは記録としての信ぴょう性が得られません。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
真正性の確保
電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中における当該事項の改変又は消去の事実の有無及びその内容を確認することができる措置を講じ、かつ、当該電磁的記録の作成に係る責任の所在を明らかにしていること。

音声認識アプリDragon Dictationを試して判ったように、スマートホンやマイクといったハードを目的に合わせて選び、アプリの特徴をつかんで認識されやすいように話しかけ方に慣れておけば、音声の認識や変換能力に大きな問題はなく、事後に修正する必要もありません。

保育事故の状況保存をする目的のアプリでは、ユーザーの修正機能はなくて、間隔が空いた音声を認識するごとに変換した時刻と一緒に、第三者のコンピューターに保管することで真正性を確保することが望ましいでしょう。

音声での起動と同時にアプリからアプリへお知らせ機能

もうひとつは、スマートホンの画面に触れて起動するのではなくて、無線の小型マイクで拾った音声でポケットの中のスマートホンのアプリが即起動するのが望ましく、連携しておいた他の職員のアプリに起動と同時にお知らせをしてくれる機能がとても役立つことでしょう。

マニュアルの中にアプリが起動されてお知らせが着た時のそれぞれの役割分担を決めておけば、迅速に組織内の連携作業が進むことでしょう。真正性の確保と音声起動がつくだけでアプリとしての可能性が高まりました。

保育事故の記録と声を出すことの大切さ

 今までも保育の中では保育日誌や連絡帳といった記録をとる機会は数多くあります。現行の記録作業やツールの目的というものとは別に、事故が起きたときに、戸惑うことなく事実を時系列にそって記録するためには、事故は起きるものと認識できている中での日ごろの備えがあって達成されます。

いざというときに、いつでも聞き取りやすく誰にでも意味の伝わりやすい声を発するための訓練なども行なっておきましょう。声を出すことは協力を求めるため以外にも、出来事を第三者の記憶に刻む役割ももっています。

子どもを守り保育を守るスマートホンの使い方

MM総研の調査によるとスマートホンの契約台数は5,734万件で、携帯電話契約総数にいたっては1億4,413万件にのぼるそうです。人口普及率は96.0%となっていて生活になくてはならないものと言ってよいでしょう。しかし保育の世界では、園外引率のときの連絡手段としての使用以外には仕事から切り離した私物扱いです。

緊急時であっても園内では個人の携帯から電話をしてはいけないといった取り決めがあることも珍しくありません。流行りだからといって無理にデジタル化したり、スマートホンを保育で使っても質は向上しません。しかし安全に限らず解決できることが望ましい保育の課題について、新たな手段やツールにヒントが隠れている可能性を考えて、今までの取り決めや思い込みを見直すことも必要ではないでしょうか。

書籍【保育救命】~保育者のための安心安全ガイド~

【読者の声】園で子どもたちをのびのびと遊ばせてあげたいけれど、安全面が気になってしまって、禁止ばっかりを作りがちでした。でも、ここにのっている、ハザードマップを作れば、事前に予防ができそうだし、とっても簡単なので、忙しい私たちでもできそうなので、早速やってみたいと思っています。 怪我の対処法も、チャート式で簡潔になっているのでわかりやすいです。かなりオススメですよ。【評価:★★★★★】

【読者の声】保育現場のケガの手当て、事故対応の決定版といえる1冊。チャート式で、緊急時に何をしたらいいかの判断がわかりやすいと大好評。ハザードマップをつかったヒヤリハットの対応から、不安の大きな保護者対応まで、これ1冊で準備できます。【評価:★★★★★】

  • 筆者紹介
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遠藤 登(安全管理研修担当)

1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始しました。2011年お昼寝中に心肺停止した園児を救うことが叶わず現在の活動に至る。株式会社保育安全のかたち代表取締役/ 保育現場のリスクマネジメントをテーマとした書籍を執筆(単著・共著ほか)

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