保育の事故報道と再発防止策

保育の事故データベースNo.73「園内ホールの骨折事故」の独自分析

 「特定教育・保育施設等における事故情報データベース」No.73に掲載された事故について、第三者が再発防止に役立てるためのポイントを考慮しながら、独自に分析を試みます。データベースに掲載された以外の情報は非公開とされていますので、掲載された情報に基づく想像、および私見をふくむことをご承知おきください。

No.73の概要:平成27年9月。給食後の午睡準備中に、園内ホールであそびはじめた4歳児数名のうちひとりが、滑り台から転倒し、右手上腕を骨折する。自治体からは、子どもに対する安全教育と、目視による児童の行動把握の必要性について言及されています。

保育の事故データベースの事故発生の要因分析の読み方
 内閣府に、「有識者、地方公共団体、事業主代表・労働者代表、子育て当事者、子育て支援当事者等(子ども・子育て支援に関する事業に従事する者)が、子育て支援の政策プロセスなどに参画・関

No.73 事故発生の要因分析に係る自治体のコメント
「児童に園生活の流れやルールを身につけさせる保育教育を行うことと合わせ、目視による児童の行動把握に努め事故を未然防止していく必要がある。」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/index.html#database

SHELモデルにそって事故の背景を解析する

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 「S :ソフトウエア」と「H :ハードウエア」について見ると、「片付けをし午睡準備に入ろうとした矢先(S)」、「保育者が午睡準備と排泄を促す指示(S)」が出ていましたが、「戯れながらホール(H)」に向かい、「滑り台に下から(H)」のぼるなどしました。

事故発生の要因分析の「環境面」に、「給食後は休息をとるため、子どもたちは保育室内で活動することにしている」とあることから、日頃は食後に保育室内で安静にあそび、その後は午睡の準備に入るという流れが習慣づくよう配慮されていたことが判ります。

子どもだけで園内ホールへ入る可能性が想定されていなかった

「E :環境」と「L :周りの人たち」では、「ホールは保育室からは見えない(E)」ところにあり、「事故発生時は保育者がいなかった(E)」そうです。そして「滑り台に下からのぼり、上から滑ってきた女児と接触(L)」して転落して、骨折をしました。

ホールは見えないが、保育者を配置されておらず、保育者も午睡準備と排泄を促す指示のみだったことからも、給食後から安静に午睡に入る流れができていると考えられており、園全体で子どもだけでホールに向かう想定などなかったことが想像されます。

子どものミスと保育者のヒューマンエラーを考える

 午睡準備と排泄を促す指示が出ている中でホールに向かったことから、約束事やルールを破った子どもに対する、目視による行動抑制と、「子どもと共に」、「活動の流れと生活の流れをつくっていく」教育の再徹底が、主な改善策として挙げられています。

子どもの立場からすると、あそびに夢中で指示が聞こえていなかったことは十分に考えられます。子どもたちだけで保育室を抜け出した先にある危険など想像もつかず、ルールを破る意図もなく、子ども同士で刺激しあい、自制すること以上に、ただ行動を起こすことの面白さに走った末に、し損なった(ミスをした)結果かもしれません。

保育者が時間に追われ気持ちにゆとりがなかったのではないか

「保育者は午睡に向かうため、目の前の作業に追われていた」ことから、午睡の時間が迫っていたことから、保育者の気持ちにゆとりがなかったことが想像されます。気持ちが追われていると、どうしても視野が狭くなったり、できることもできなくなります。

保育者の誰もが常日頃から、「目を離さないようにすること」に注意は向けているものです。しかし、できないことには理由があるので、具体的にどのように目を離さないかを考えるとともに、必ず目が離れることがあることを認識しての対策も望まれます。

事故発生の背景要因ごとに改善策を考える

「S :ソフトウエア」:安全教育や、子ども自ら判断できる人間性を育む教育を継続していくとともに、午睡の準備、排せつを促す段階で、たとえば一度、活動の流れを切って、子どもの意識を保育者に向けた上で次の行動のゴールを確認しあうと、子どもたちの熱くなった気持ちも覚めて、指示も少なくなっていくのではないでしょうか。

「H :ハードウエア」:「ホールには必ず保育者がいるように」するといっても、給食から午睡へと向かう時間帯で保育者が居るのは現実的ではなく、抜け出した事実もあることから、勝手にはホールに入り込めない対策の検討が望ましいのではないでしょうか。

子どもも保育者も一体となる仕組みをつくる

「E :環境」:「保育者同士が連携をとり子どもたちに目を配るようにする」には、個人の意識だけでは限界がありますし、個々の保育の都合もありますので、「雑多な仕事に追われる時間帯」ほど、手が足りてないところを手伝う以上に、目の行き届いていないところを見回るといった役目の割り当てを検討することも必要かもしれません。

「L :周りの人たち」:「遊びに満足して進んで午睡に入ることができる」という目標(ねらい)からすると、指導計画や習慣通りに進める以外に、進行状況に応じて午睡の準備を済ませて、絵本の読み聞かせなどで時間を過ごす選択もあったかもしれません。保育者と子どもたちが同じたのしさを共有して、一体感をもって進みたいですね。

保育の事故データベースを保育者側からパワーアップする事故報告書
 内閣府から公開された保育の「特定教育・保育施設等における事故情報データベース(以下、保育事故のデータベース)」が公開されたことは、みなさんのご承知の通りです。保育の事故データベー

安全配慮義務がある保育者としての対応を考える

 腕が変な角度で曲がっていたとか、骨折と判断つく見た目ではなかったのでしょう。それでも「尋常でなく痛がるため骨折を」疑って、副木をするほどだったならば、親御さんへの連絡を試みつつも、即座に保育園側で病院に搬送することが望ましいと思われます。

病院に行くかどうか、保護者に判断を仰ぐことが必要なケースがあるかもしれませんが、副木を必要としたほどの尋常はない痛みを抱えた子どもを前に、すぐに病院に連れていかないのは、安全配慮義務がある保育者の対応として十分ではないでしょう。

保育園の骨折は副木より保育者同伴の搬送を優先する

時間をかけずに病院に行ける街中の保育園で、骨折に副木は必要ありません。スムーズに固定できずに、反対に骨折を悪化させることもあれば、治療の際に、副木をとるのに時間を奪われるばかりか、固定器具をとるために痛みを与えることにもなりかねません。

保育者が手を添えて骨折部位を支えます。保育者が病院に連れていき、病院で当事者として経過を伝えることで、医療者とともに子どもを適切な治療へと導きます。治療後までの子どもの様子も踏まえて、ひとつひとつの事実を保護者に説明し、以後の対応まで話ができて初めて、子どもを第一に考えた保育者の手当ての在り方だと考えます。

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