発達と保育リスクマネジメント

「スゴいい保育」に掲載された豊かな保育を実現するリスクコントロールについて

 保育のいまの声と必要な未来を伝えるサイト「スゴいい保育」の中の、「シンカする保育(「深化」と「進化」を続ける保育の今をさぐる)」の一番最初の記事として、安全と豊かな保育についてまとめた、『保育士は言わない【危ないから遊んじゃダメ!】という一言。安全と豊かな保育を両立する方法論とは。』を掲載していただきました。

【1/3回】保育士は言わない「危ないから遊んじゃダメ!」という一言。安全と豊かな保育を両立する方法論とは。
安全ばかりを優先してもよい保育ではない(中略)保育者向けの、現場に必要なリスクマネジメントの普及です。保育の教育的な価値を高めるために、どのようにリスクとのバランスをとるか?という所に焦点をあてています。

この中で、「リスクコントロール」という言葉が出てきます。保育では、なじみのない言葉ですが、安全で豊かな(のびやかな)保育を行なっていくために、これからの保育者にとって必須のスキルなので、セミナーでもお伝えしている事柄をふくめてお話します。

保育の事故のリスク(Risk)は「危険」と分けて考える

 リスクコントロールについて知っていただく前に、リスクと、危険との違いについてお届けします。少し前まで、リスクとは、「危機」と訳されて使われていた(たとえばリスクマネジメントというと、「危機管理」と言い換えていた)ので、保育現場では、その違いなどを考えることなく、リスクのことを、『危険』と言ってしまっています。

危険とは、「危」という漢字が表すように、あらゆる危ない状態やモノをひと括りにした言葉です。危機管理という言葉と合わさって、安全な保育とは、子どもにケガをさせないように、「危険を排除すること」とされて、そのように、あらゆることを排除してばかりでは子どものためにならないと、安全な保育に対して反発を招いてしまいました。

英語のriskという語は日本語でも「リスク」として使用し、危険とは訳さないことが望ましい(中略)危険は、1.事故(peril)、2.事故発生の可能性(risk)、3.事故発生に影響する環境、条件、事情(hazard)、4.事故発生の対象または単位(exposure)、5.保険契約(contract)、6.危機(crisis)を含むことになります。
引用:受験対策シリーズ 金融リスクマネジメント2級

保育は「小さなケガぐらい大丈夫」と決めつけることこそ危険

危険の排除に対抗するように、子どもの発達を保障するために、保育は「リスクをとる」ことも大事との考え方もされました。子どもがチャレンジすることは、ケガをすることもあれば、反対に学びを得ることもできるし、大きなチャレンジほど子どもの発達にとって、得る学びは「ハイリターン」だという、皮肉にも、経済活動をもとにした考え方でした。

損害または利益のいずれかを発生させる「投機的リスク」と呼ばれています。投機的リスクとは、リスクをとるボリュームの大きさで、ある程度の損害を限定することができますが、残念ながら保育では、チャレンジの要素の大小で、子どものケガの大きさを限定することはできません。いつ、いかなるときに命にかかわる事態が訪れるかは判らないのです。

安全で豊かな保育を実現するリスクコントロールとは

 スゴいい保育にも書いていただきましたが、「(子どもが)大きくなるにつれ、(中略)リスクも大きくなります。そのようなリスクを無視し、教育的な価値だけを優先すれば、大きな事故に繋がります。そのバランスをどうとるのか、という所が重要」です。

保育の事故につながるリスクは、そのまま放置をしていると、実際に事故が起きたときの損害が小さくなるか、反対に重大なものとなるか、その結果を限定することはできません。これまでの保育でも小さなケガぐらいはあったけど、「子どものあそびにケガはつきもの」だし、チャレンジすることが大事!と思っていても、昨日までは偶然が重なったために、小さなケガで済んでいただけで、明日は、重大な事故を招くかもしれないのです。

失敗から学ぶことはあっても、ケガからの学びはない

確かに子どものあそびに、ケガはつきものです。しかし、あそび・活動の「失敗」に学ぶことはあっても、ケガをすること(カラダを傷つける損害)自体に学びはありません。子どもの学びは、機会、人、遊び方などの環境(活動)から現れるものだと思います。

小さなケガであろうと、子どもがケガをするということは、保育の中で「事故」が起きたということです。ケガをしても、恒常的に、保育・あそびが続く範囲でとどめるためには、保育する段階から安全対策をすることが求められます。リスクコントロールとは、子どもがケガをしないように何もさせないことではなく、子どもの主体的な活動を通じて、失敗しても最小限のケガで、大きな価値が生まれるように、安全対策のバランスをとることです。

保育を仕事にする対応義務者のための保育の事故のリスクマネジメント
 保育を仕事にする者(保育所職員や幼稚園教諭、そして保育ママやベビーシッターなど)は、保育の利用者と保育の契約を結びます。保育の契約を結ぶと、保育をするにあたって、子どもの事故に対

リスクコントロールとは
リスクマネジメント規格 JIQ Q 31000:「リスクを修正するプロセス」
リスク分析・リスク評価の結果明らかになったリスクに対して対応方法を講じること。

保育の事故はリスクを細分化して対策する

 厚労省の発表によると、全国の保育所の3割で給食の「誤配」や「誤食」が起きていたそうです。以前は、保育所に通う乳幼児の食物アレルギーに対して保育する側の知識が足りずに、誤食といった事故が起きていました。そして今は、アナフィラキシーが起きるリスクに対して、対策が行なわれているにも関わらず事故が起きています。

たとえば、アナフィラキシーが起きるリスクに対して給食をつくり分けても、「混入によるリスク」が、お皿を替えれば、「配膳間違いによるリスク」が新たに生まれます。リスクコントロールは、リスクを危険と言い換えてはいけないのと同様に、漠然とした大きなリスクに対する、ひとつの対策で終わるのではなくて、活動を細分化して、そのひとつひとつのリスクに対して明確な対策をしなければ、やはり事故が起きるという証です。

保育所の誤配、誤食 アレルギー症状、1589施設で
(毎日新聞2016年6月15日)
保育所に通う乳幼児の食物アレルギーに関して、全国の保育所の3割で給食の「誤配」や「誤食」が起きていたことが、厚生労働省の調査で分かった。

安全で、豊かな(のびやかな)保育は両立する

保育の事故が起きるリスクは、活動の流れに合わせて形を変え、タイミングを替えて現れます。その細分化されたリスクひとつひとつに合わせて、リスクの「回避」とリスクの「制御」といったリスクコントロールの考え方をもとにして、対策を講じていきます。

リスクコントロールに、リスクの除去はありません。リスクをゼロにすることはできないためです。たとえばアナフィラキシーのリスクは、食物アレルギーが治らないと決して消えないので、アレルゲンの完全除去で、リスクを回避します。混入のリスクは、給食をつくって配膳する以上はなくならないので、すべてを対応食に替えるなどして、リスクを小さくできるように制御していきます。このようにして、事故につながる原因を減らしていきます。

アレルギーに関する除去食、となると話は別です。食育という教育的な観点はありますが、その子にとっては絶対に食べてはいけないものです。つまり、その子にとっては、取り除かなくてはいけないリスクです。これは、「リスクの回避」です。
【1/3回】保育士は言わない「危ないから遊んじゃダメ!」という一言。安全と豊かな保育を両立する方法論とは。

保育者がリスクコントロールの先にめざすもの

【1/3回】保育士は言わない「危ないから遊んじゃダメ!」という一言。安全と豊かな保育を両立する方法論とは。

このようにして、子どもの命にかかわる重大な事故を減らしていくことは、注意義務が課せられた保育者にとって大事な職務ですが、それは手段であって、事故を減らすこと自体が目的ではありません。保育の価値と、保育にともなうリスクとのバランスをうまくとって、安全で豊かな保育をつづけていくことで、やりがいも生まれます。

今回のリスクコントロールについて、記事として掲載してくださった「スゴいい保育」では、ほかにも、病児保育のツボ、世界の保育からといった、保育の今を幅広く知ることができます。保育者が知見を広げて、それらをきっかけに感性を深めながら、目の前の保育に立ち返るって、大事なことだと思います。要注目ですね。http://sugoii.florence.or.jp/

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