保育園の午睡にベビーセンサーは必要か?保育現場ならではのベビーセンサーの望ましい使い方とは

2018年12月25日

「保育園にベビーセンサーは必要か?」

 保育園の導入事例が増えるに比例して、導入を迷う声も聞かれます。
それは保育現場に、選択肢に対する情報が満足に共有されていないことが一因ですが、2018年末時点の答えは?というと「保育園にとって、なくても構わない」ものです。

ベビーセンサーに限らず「IoT関連商品」は、保育者の業務軽減が進むことがうたわれています。保育者の睡眠の見守り業務は子どもの命を守ることです。しかし現行のベビーセンサーは、その保育者にとって代わって、子どもの命を守ることはできません。あくまで補助するツールです

2019年2月に、神奈川県で開催される認可外保育所職員向けの研修(保育園の午睡時間における事故防止と、午睡中の保育園児の体動異常を検知するIoTセンサー(以下「ベビーセンサー」)の取り扱いがテーマ)に登壇いたしました。2018年、全国の自治体初の施策として、神奈川県大和市が市内全保育施設にベビーセンサーを配布したことを受けて、設置されて終わることなく、保育園の安全性向上につながるように、あらためてベビーセンサーの取り扱いについて触れていきます。

乳児の睡眠中事故防げ 全国初、大和市が無呼吸アラーム配布
(神奈川新聞 暮らし話題 2018/03/18)
大和市は睡眠中の乳児が無呼吸になった場合に警報音を鳴らして知らせる機器を2018年度中に市内全保育施設に配布する。乳児が突然死する事故の防止が目的で、異変の早期発見につなげる。同市によると、こうした「無呼吸アラーム」と呼ばれる種類の機器を自治体が購入し、全保育施設に配るのは全国で初めて。

保育園にベビーセンサーは必要か?

 保育園に導入されている主要な商品には「SIDSや睡眠障害等の病気の評価ほか事故防止に用いる機器ではない」旨の注意書きがあり、たとえ「医療機器」のベビーセンサーでも、機械だけに頼っていては子どもは守れません。(詳しくは以前の記事をご参照ください)。ベビーセンサーとは、保育者の見守り業務に代わるものではなく、これまで同様の保育者の業務の延長線上で有効となるものであっで、“なくても構わないが、役立て方しだいで、あれば助かるもの”です。

2018年4月からはじまった、「保育園等におけるICT化推進等事業」交付金の影響もあって、最近ではソフトバンクグループの株式会社 hugmo が、新たなベビーセンサーの提供を発表するなど、保育園に導入されるベビーセンサーの選択肢も一気に増えつつあります。保育園向けの開発や導入が活発な今こそ、使用する保育者はベビーセンサーの理解を深めることが求められます。

タイプ特徴留意点
1.体動感知型センサー主にマット(布団)の下に敷く感知板タイプ。 寝ている子どもの体が動くこと(体動)で感知板に伝わる振動を常時モニターする。一定時間、振動が感知できなくなるとアラームを鳴らして注意喚起する感知板は空調や床から伝わる微細な振動等に影響を受けることがあるほか、産科の保育器を想定した大きさ(平均 300×500mm 程度)のため、寝返る子どもの寝相しだいで感知板に振動が伝わらないことがないよう、発育に合わせた設置方法を検討する
2.呼吸感知型センサー主にマット(布団)の上に敷くエアー式感知シートタイプ。 寝ている子どもから感知シートに伝わる様々な振動の圧の違いを呼吸から体動まで細かく分類して常時モニターする。一定時間、振動が感知できなくなるとアラームを鳴らして注意喚起する呼吸感知にブレがあり正確性に課題が残るが呼吸の回数や乱れが大まかに見て取れるので、呼吸停止を知らせるアラーム機能に依存することなく、5分ごとの保育者の視認の際に振動の波形を一緒に確認して睡眠中の呼吸異常に注意する
3.体勢見守り型センサー設置型カメラで撮影ほか・子ども服に部品を装着するタイプ。 子どもの服に装着した部品の振動や動きの違い、子どもの寝姿を撮影した画像の違いを解析して体の向きの違いを常時モニターする。うつぶせ寝を認識するとアラームを鳴らして注意喚起する子どもの動きの認識ではなく、画像の違い、動きの大きさを比べて体勢(子どもの寝姿勢)が変わったことをチェックしているため、カメラであれば対象がよりよく写ること、部品の装着であれば部品そのものの“固定”に配慮する

 アラームが鳴ったので保育者が慌てて子どもに駆け寄ると、何事もなかったばかりか、本人とともに他の子どもまでが起きてしまったことから、アラームの音を小さく設定したり、アラームを切ってしまっているという話までが現場から聞かれます。ベビーセンサーはタイプに関わらず、誤ってアラームが鳴ることがあります。子どもの眠りを妨げないように、子どもの体に触れない「非接触型」ということもあって、睡眠中の状態しだいで意図しない判定が出ることがあります。

保育者が子どもの存在を認識して見守るのに対して、現段階のベビーセンサーは、物理的な事象をとらえるにすぎません。たとえば感知板が「空調や床から伝わる微細な振動等に影響」を受けた場合、子どもの体動がなくても別の理由で発生した振動(単なる感知板の揺れ)を体動があるものとして作動する可能性は否定できません。ここが人間の見守りとの大きな違いであって、保育者に代わって子どもの事故を防止できない理由ですが、人間にはないセンサーならではの利点もあります。

保育園におけるベビーセンサーの望ましい使い方

 保育者が注意深く見守っていても見落とす、子どもの体動(モゾモゾした動きから体の小さな振動)を途切れることなく感知できるほか、ベビーセンサーが様子をつぶさに記録することで、事故の発生時だけでなく、日常的に子どもの睡眠の様子を振り返ることができます。睡眠中の子どもの呼吸や、体動の乱れを記録から読み取って、関連する日常の保健記録と照らし合わせることで、子どもが健やかに眠れるようになる、保育環境づくりについても後押ししてくれることでしょう。

保育環境は、もともとベビーセンサーにとって悪条件となる要素がたくさんあります。たとえば、窒息事故がうつぶせ寝だけで起きるのでもなければ、子どもの予期せぬ突然死も様々な要因が重なって起きることから、室内換気や寝具の調整、個別の呼吸チェックなどの様々な安全対策が求められます。安全管理において、人間と機械双方が目的に向けて動いた結果として、仕方なくぶつかりあってしまう場面で、誤作動ととらえて嘆いたり、ベビーセンサーと保育環境のどちらかに合わせて、どちらか一方を制限するでもなく、適切に対応できるだけの理解を深めることが大切です。

 ベビーセンサーは様々に記録を残すことから、睡眠チェックの作業軽減につながると期待されています。その「睡眠チェック(表)」には、午睡中の子どもの呼吸状態や、寝姿勢などが記載されますが、内容は保育者が評価・判断した先にある見守りの記録でもあります。うつぶせ寝があったら危険性が高いと評価し、姿勢を入れ替える必要があると判断して、行動した結果として、子どもにとって何事もない形で睡眠が続くことになり、記録表には観測した体勢が記載されることになります

午睡時間を通じて、保育者が一定時間ごとに観察した、その点と点とをつなぐことで、子どもの呼吸や、寝姿が乱れた様子から、子どもが健やかに眠れているか、反対に危険な兆候を見せることはなかったか、センサーの記録から睡眠の状態を読み取って、午睡環境の改善に役立てます。ベビーセンサーを、単なる便利な記録機能だけで考えることなく、保育者の補助ツールとして、子どもの健康な睡眠の振り返りに活用することが、園生活の養護を司る、保育者にとって望まれる使い方です。

ベビーセンサーを生かす保育者の救命処置技能

 ベビーセンサーに対して、最も期待することは子どもの緊急事態の早期発見です。保育施設の重大事故事例では、発見から緊急通報するまでに、不適当な時間がかかって搬送が遅れたり、緊急通報せずに近隣の病院へ運んだことで、悔やまれる結果を招いたケースがあります。せっかくベビーセンサーが緊急事態を知らせてくれても、やはり子どもを助けるのは保育者の迅速な対応であり、アラームが鳴った時に、保育者自身の手で子どもの緊急性を判断する技能が問われます。

緊急性を見極める技能とは、主に“反応の確認と呼吸の確認”です。保育施設では救急車を呼ぶ判断を、園長や看護師に委ねる場合も少なくありませんが、反応の確認は、それだけで十分に救急車を呼んでよい評価基準であり、誰でも行なえます。そして呼吸確認においては、「10秒以内に(間違いなく)呼吸があるといえなければ」、すぐに心肺蘇生(最初に胸の真ん中を圧迫する)を開始します。これらは、救命処置のスタートを切るための大切な技能なので理解を深めましょう。

重大事故の際の保育園の役割と望ましい保育環境

 ベビーセンサーのアラームが鳴るときというのは、子どもの重大事故の発生が想定されています。救急車を呼ぶ場面も出てきます。その対応に追われている時も、子どもたちの安全を確保するために寝かせたままにしておくことはできません。特に死亡も考慮しなければいけない場合は、第三者(自治体や警察等)の介入があったときのための現状保存も必要です。保育園として子どもの命を守るためにやらなければいけないこと、備えるべき事柄は山ほどあります。

ベビーセンサーが保育園に導入されるようになったのは、毎年、午睡時間に子どもの命が失われつづけ、保育園が安全対策を見直せば救える命があること、また業務過失ともいえる、不適切な保育が一因ともなったことが明らかとなり、改善策のひとつとして、睡眠チェックの実施が求められるようになった背景があります。子どもの健やかな睡眠は、子どもの生命を保持するための安全の確保があってこそと考えて、子どもの命を守る最良の保育環境をつくりましょう。

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保育安全のかたち

代表:遠藤/専門:保育の安全管理・衛生管理/保育事故の対策、感染拡大の予防、医療的ケア児ほか障害児の増加など医療との関わりが深まる一方の保育の社会課題の解決にむけて、保育園看護師の業務改革ほかリスク管理が巧みな保育運営をサポート

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