保育現場で使える応急手当

集団保育の応急手当 「万が一のとき」の初期対応の手順

 応急手当の基本はケガや病気が悪化することを遅らせたり、手当て開始当初の状態を留めることです。それに加えて、保育者には「保護者の不安を解消すること」が応急手当のゴール到達に求められます。子どものケガを最大化することを防ぐことも、保護者の不安が解消される報告をするためにも、応急手当を開始するはじめの段取りがとても大切です。

保育施設で子どもが倒れていたら、すぐにでも駆け寄って応急手当をしたいのが人情です。しかし、保育施設は保育時間の多くが集団保育です。乳幼児の特性を考えたら、まず傷害を負った子ども以外の子どもの安全を確認して、その安全を確保しないと二次災害が発生しかねません。それもふくめて保育施設では開始直後の場のコントロールが重要課題です。

応急手当開始直後に場をコントロールする意味

 応急手当開始直後に場をコントロールするのは、周りの子どもの安全を確保するだけではなく、傷害を負った子どもに対して安全に、そして迅速に手当てをすることにもつながります。たとえば熱性けいれんを思い浮かべてみましょう。最近は、口の中にモノを入れたりせずに、安静に熱性けいれんの様子を経過観察する必要性が知られるようになりました。

0歳児、1歳児といったクラス内で熱性けいれんが起きて、保育者がその児童だけに真っ先に目を向けたらどうでしょう。けいれんしていることなど判断がつかない子どもたちが、けいれんしている子どもに馬乗りでもしようものなら、観察どころの話ではなくなります。周りの子どもの安全を確保することは、安全な状況で応急手当をすることにもつながります。

安全に応急手当ができる場と応急手当の流れを確保する

蘇生ガイドラインにもとづく一般的な心肺蘇生の手順では、倒れている人に呼びかけて、(その呼びかけに)反応しなかったら周りの人に手助けを呼びかけて役割を振り分けます。気負いすぎて冷静になれない可能性もあり、必要に応じて迅速に病院搬送につなげるためにも、助けを早い段階で呼んで行動を振り分けることを忘れないことが大切です。

集団保育では、ひとりの子どもの異変に気づいたら、周囲にも同じ異変がないか、素早い全体の確認が求められます。ひとりの子どもだけと判ったら、その時点で助けとなる保育者を呼んで応急手当に専念します。このときに園長先生や看護師を呼ぶ場合にも、場の全体の安全を保ちながら、流れを途切れさせないようにしていただきたいと思います。

感染防止を目的とした使い捨て手袋の使い方

保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン

 いよいよ倒れた子どもに近づきます。呼びかけは、子どもの肩を叩きながら行ないます。応急手当をするときは、子どものカラダに触れる場面に備えて、子どもに近づくと同時に使い捨て手袋をはめることが望ましいということが、「保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン」(厚労省)の中でも触れられています。

大人が傷病者である場合に比べると、子どもがAIDSなどといった重大な感染症を患っている可能性は低いものの、過去には母子感染でB型肝炎を患った子どもを通じての集団感染が確認されたこともあり、吐物や血液に触れる場合は、感染防止のための手袋使用が望ましとされています。特に保育者が媒介者とならないためにも使用を心がけましょう。

感染防止のために手袋の持ち歩きのすすめ

吐物を素手で受け止めながら子どもをトイレに誘導することが保育者の美徳と考えられていたころや、保育者が手袋をつけて子どもに触れることは、汚いものとして扱うことだと嫌悪された時代からすると、保育施設で使い捨て手袋が使用される機会は増えてきましたが、まだまだ、うんちや吐物で手を汚さないことが目的になっていることが伺えます。

くり返しになりますが、手袋をはめるのは、子どもを汚いものとして扱うことではなく、感染経路を断って集団感染を防ぐためです。そして子どもたちは日常的にケガをします。下痢や吐物の処理のための準備だけだと、いざ応急手当をというときに、流れを止めてしまうことにもなります。ぜひ手袋をひと組、個別に持つ段取りも検討してください。

保護者の不安を解消する報告と記録の取り方

 場をコントロールして、手袋をはめて、その場でもっとも適当な応急手当ができても、保育者の仕事はそこで終わりではありません。保護者の不安を解消すること。それは「どういったシチュエーションで、どのようにケガをして、こんな処置を行ないました。今はこうした状態です」と、保護者に伝わる形で、保護者が納得する形で報告を行ないます。

それだけの報告を行なうためには、記憶に頼るよりも、可能なかぎり(リアルタイムに)記録をします。人間の脳はきっかけがあると上書きされる仕組みになっているので、記憶していたつもりでも、何かをきっかけにして、事態が見えない曖昧な報告しかできないことになりかねません。開始当初の段取りに記録する役割も組み入れたいところです。

集団保育の応急手当における初期対応の手順

その場で記録を担う保育者が決まったら、目で見て記録するだけではなく、なるべく応急手当に関わる人間同士がひとつひとつ声を出し合って、声を聴き目で見たものを時間とともに記していきます。声を出し合うことは、互いに確認しあうことにもつながりますし、もしリアルタイムに記録ができなかった場合も、あとで思い出すことにも役立ちます。

集団保育の初期対応の手順をまとめます。まず周りの子どもの安全を確認します。手助けできる保育者に呼びかけて、迅速に応急手当ができる状況を確保しましょう。手袋をはめて傷病児に呼びかけ、反応がなかったら緊急通報とともに記録を開始できるように役割を分担します。いかがでしょうか。応急手当の技能以外の流れについてお届けしました。

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