保育現場で使える応急手当

日本版蘇生ガイドライン2010準拠 LSFA こども事故と応急手当アップデート

 Life Supporting First Aid (通称 LSFA)とは、街中の事故でケガをした人や、突発的な体調不良で(状況によっては心肺停止に至って)動けなくなった人に寄り添う、緊急の事態に対処するための応急手当を一般市民が学ぶための普及プログラムです。

保育事故と応急手当 LSFA-Children's 認定講習:子どもは小さな大人じゃない
 小さな子どもの死亡原因は、病死といったものよりは、『不慮の事故』が多く、その中でも交通事故を除けば、溺水をふくむ窒息や転落事故の割合が何十年と変わらず高い状況です。普段の何気ない

突然、傷病者に出くわしたときでも、医者や看護師といった医療資格をもたない人が戸惑いなく救急車を呼べる。そして、救急車が到着するまでの間に、呼吸がなければ心肺蘇生を行なうなど、誰もが応急手当を行なえるように、国際的な合意に基づいてつくられた各国の蘇生ガイドラインに従って、それぞれの普及・教育プログラムが開発されています。

LSFA は日本版蘇生ガイドラインに基づきます

 医療技術の発展や、命を救ったり、ときに救えなかった知見を世界中で幾度となく積み重ねることで、幾度となく応急手当の形も姿を変えています。昨年の2010年末にも、様々な研究論文をもとに、5年ぶりに日本版救急蘇生ガイドラインが新しくなりました。

そして今年、LSFA プログラムも正式に、2010年版の日本版のガイドラインにそった新たな形へとアップデートされたので、2011年1月29日(土)、その講習内容の変更点について、プログラム普及に携わるインストラクターが学ぶ場が開催されました。

LSFA こども事故と応急手当アップデートの変更点

今回、アップデートされた内容は、誰もが理解できて素早く行動に移せることが主眼におかれています。まず目をひくのは、心肺停止について判断するときに勘違いする人も多く、取り掛かるまでに時間がかかりすぎる原因と言われていた呼吸確認の変更でしょうか。写真は、2009年の夏ごろのもので、呼吸確認のやり方の変更前の特徴がよく現れています。

写真は救助者の顔を傷病者に近づける「見る・聞く・感じる」と言われてきた方法です。これが行なわれないことになりました(行なっても間違いではありません)。呼吸の異常な様子を見落とさないように、傷病者の胸とお腹の動きを見て、普段通りの動きではない異常な状態であれば呼吸なしと判断して、次の心肺蘇生へと移ることが定められました。

蘇生ガイドライン2010にみる保育事故対応と子どもの呼吸原性のポイント
 心肺蘇生のやり方が、日本版蘇生ガイドライン2010を土台とした普及プログラムへと更新されました。これまでは開始当初に「人工呼吸(補助呼吸)を2回」行なったあとに胸を30回押す手順

日経メディカル2011年2月号「トレンドビュー」(転載)
蘇生のガイドラインを変更へ
心肺蘇生は胸骨圧迫からの開始が基本に

従来は呼吸を確認する際、傷病者の口元に耳を近づけ、胸部に手を置くなどして“見て、聞いて、感じて”呼吸を観察するとされていた。しかし、新ガイドラインでは胸部と腹部を見て呼吸を確認すればよい。
http://medical.nikkeibp.co.jp/ 日経メディカルオンライン

LSFA-Children's 子ども版応急手当の背景

 呼吸なしと判断された次にくる心肺蘇生は、これまで開始直後に補助呼吸を2回吹き込んでから、胸を押す胸骨圧迫30回を行なう手順でした。蘇生ガイドライン2010は、まず「胸を押しはじめる」手順に大きく変更されました。人工呼吸は難しい、実施に抵抗があるという救助者の心理的障壁を取り除いて、応急手当の実施者を増やすことが目標です。

身近な人が倒れたとき救急車を呼ぶだけでも慌てたり、街中で倒れている人に対して、自分がやらなくてもほかの誰かが助けを呼ぶだろうと見過ごされることで、救急隊の現場到着が遅れたり、AEDも使われず救える命を救えないケースがあります。少子高齢化が進んでいる現代では、不慮の事故から子どもの命を守る人を増やすことが求められます。

不慮の事故による子どもの傷病を未然に防ぐ

一般的な救命講習のほとんどが大人の傷病者を対象としたものばかりです。しかし子どもの事故が、大人の事故と同じとは限りません。子どもは窒息や溺水といった呼吸ができない事態に陥って命を落とす事故が多いことが知られています。そんな子ども特有の事故要因を分析して、予防にはじまる適当な応急手当を行なえることが望ましい社会の姿です。

また、蘇生ガイドライン2010では、救命の連鎖の最初のはじまりが「心停止の予防」に変更されました。応急手当は、心肺蘇生法などの手技の内容だけを見ると、心臓や呼吸が止まってからの対応方法と考えられてきましたが、これからは「心停止や呼吸停止となる可能性のある不慮の事故による子どもの傷病を未然に防ぐ」意識をもつことが大切です。

傷病者を救命し、社会復帰に導くためには、「救命の連鎖」が必要となる。救命の連鎖は、1.心停止の予防 2.心停止の早期認識と通報 3.一次救命処置 4.二次救命処置と心拍再開後の集中治療の4つの要素によって構成されている。心停止の予防は、心停止や呼吸停止となる可能性のある傷病を未然に防ぐことである。
JRC(日本版) ガイドライン2010(確定版)第1章「一次救命処置」より

LSFA のほか応急手当に終わらず事故予防を学ぼう

LSFA の土台には蘇生ガイドラインが背景にあって、一般市民が数多く受講している消防署や赤十字の講習会と一緒です。さらに、LSFAの様々なプログラムの中でも、子ども版応急手当プログラム LSFA-Children's は、子どもの事故の対応に特化したプログラムとして、日本国内の子どもの事故事情とすり合わせながら、日本国内で初めて開発されました。

子どもの不慮の事故の予防から、子どもの心肺停止の対応までをトータルに学べるプログラムを受講した経験のある人はまだ多くありません。保育者のとって応急手当の知識と技術を学び、命にかかわる大きな事故を減らす環境をつくることは責務です。保育の事故で子どもの命が不用意に失われることなく、充実した保育が実践されることを願っています。

書籍【保育救命】~保育者のための安心安全ガイド~

【読者の声】園で子どもたちをのびのびと遊ばせてあげたいけれど、安全面が気になってしまって、禁止ばっかりを作りがちでした。でも、ここにのっている、ハザードマップを作れば、事前に予防ができそうだし、とっても簡単なので、忙しい私たちでもできそうなので、早速やってみたいと思っています。 怪我の対処法も、チャート式で簡潔になっているのでわかりやすいです。かなりオススメですよ。【評価:★★★★★】

【読者の声】保育現場のケガの手当て、事故対応の決定版といえる1冊。チャート式で、緊急時に何をしたらいいかの判断がわかりやすいと大好評。ハザードマップをつかったヒヤリハットの対応から、不安の大きな保護者対応まで、これ1冊で準備できます。【評価:★★★★★】

  • 筆者紹介
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遠藤 登(安全管理研修担当)

1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始しました。2011年お昼寝中に心肺停止した園児を救うことが叶わず現在の活動に至る。株式会社保育安全のかたち代表取締役/ 保育現場のリスクマネジメントをテーマとした書籍を執筆(単著・共著ほか)

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