保育の事故報道と再発防止策

保育施設の正月行事で子どもとお餅を安全に食べる方法

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 2016年の元日も高齢者を中心にした窒息事故が複数件起きたように、お餅の危険性について広く知られるようになりました。子どもたちに日本の食文化のひとつとして、保育施設でお餅つき行事を開催するにあたって、安全にお餅を食べる方法について考えます。

食文化の継承は教育的意義として大切なことですが、それを理由に幼児期に安易に食べさせられるほど、お餅が子どもにとっても安全な食べ物でないことは、みなさんご存じの通りです。あらためてお餅による窒息事故の背景について、保育利用者とともに認識して、安全で、たのしいお餅つき行事を迎えてくださることを願っています。

元日の1日、餅を喉に詰まらせる事故が相次いだ。東京都内では、11人が病院に搬送され、80代の女性が死亡した。(中略)東京消防庁は、餅を小さく切って、急いで飲み込まず、ゆっくりとかんでから飲み込んでほしいと、注意を呼びかけている。
出典:朝日新聞(2016年1月1日22時53分)

窒息事故の救護件数は子どもが5分の1を占める

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「高齢者にとって危険」という言葉が躍っています。一般にも子どもに対して細心の注意を払ってお餅を食べさせるまでには至っていないことが、東京消防庁の発表から判ります。全体に高齢者が多いものの、救護件数では10歳未満の子どもの数も決して少なくありません。

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出典:東京消防庁「食品による窒息事故の発生状況等について」

救護されながらも多くが軽傷で済んだことを、注意できている証とみるか、子どもと高齢者とどのような違いがあったのかは、詳細な分析が必要なところですが、少なくない数の救急搬送を必要とした窒息事故が起きていることを重く受け止めたいところです。

保育を行なう以上は救急体制は万全に整える

窒息事故の対応に対しては、まだまだ誤解も多く、担任だけでは迅速に対応しきれなかったという報告例もあります。もし、知識などについて不十分だと思うところがあれば、まずは窒息事故が起きるリスクの大きさについて見なおしていただければ幸いです。

窒息事故の防止にと口内に指を入れたり水を飲むのが間違いで危険な理由
 窒息事故について対応する研修を行なうと、「指を入れて掻き出そうとして指を噛まれた」という悩みや、「水を飲ませるのは?」という疑問を尋ねられます。そのほかにも背中を叩くタイミングが

行事にあたって、つくる過程、食べるまでの流れを綿密に打ち合わせるのに比べると、緊急時の対応については、「もし何かあれば、近くの職員にお知らせください」のひと言程度で終わることも少なくない印象です。誰が、どこで事故に遭遇しても、迅速に同じ対応を行なうために、緊急時の流れについても細やかに打ち合わせていただきたいと思います。

窒息事故以前にクッキング保育の保健衛生を見直す

担当保健所 八王子市保健所
患者関係 発症日時 12月10日午後10時から同月12日午後5時まで
症状 腹痛、おう吐、下痢、発熱 等
発症場所 自宅 等 
患者数 患者総数 41名
(内訳) 男:16名(患者の年齢:3~41歳)
女:25名(患者の年齢:3~60歳)
入院患者数 0名
診療医療機関数・受診者数 19か所 22名(男:7名、女:15名)
原因食品 餅つき会でついた餅(のり、きなこ、あんこ、納豆、ごま)
病因物質 ノロウイルス

出典:東京都福祉局「食中毒の発生について~保育園の餅つき会でついた餅で発生した食中毒~」

正月行事に限らず、食育を目的としたクッキング保育について回るのが、調理員以外の不特定多数が、調理段階の食べ物に触れることで高まる感染リスクです。調理担当になると、少々の体調不良では断りづらいという理由で、無意識に感染元になるケースもあります。

保育施設の集団感染は、割合でいえば子どもが感染元であることは多いものの、大規模な感染を引き起こしたケースで、職員が感染元だった事例も散見されます。体調管理と確認については、大人も徹底した上で、必要であれば行事の延期も仕方なしと、誰もが納得できる形で進むように、事前に園内外への十分な情報提供をするのが望ましいでしょう。

感染予防グローブやマスクをつける適当なタイミング

感染予防には、主に接触感染と飛沫感染の、2つの感染経路を断つように努めることが最も有効です。接触感染を防ぐための手洗いも、まだまだ改善の余地がありそうですし、感染予防グローブやマスクをつけての調理にいたっては進んでいません。

感染予防グローブやマスクの使用にあたっては、ぜひ潤沢な量を準備していただき、食べ物に触れる直前からではなくて、調理に関するものに触れる準備の段階から、子どもひとりひとりに配り終える、その瞬間まで、小まめに取り換えることで効果が高まります。

安全なお餅にする調理のポイントとは

 お餅に限らず、窒息を予防する調理のポイントとして「小さく切る」ことが大切です。では、どれぐらい小さく切れば適切でしょうか。参考までに子どもの気管の太さを確認すると、想像以上に細いことが判ります。子どものカラダに合わせて、食材の大きさだけで考えてしまうと、食育として噛む感触を味わうどころではないようです。

小児の気管内径は1歳で5mm前後、5歳でも1cm程度と非常に細い
出典:九州病院「気道内異物への対応(呼吸器内科のトピックス)」

食材の大きさは、摂食(せっしょく:噛みくだいてノドの奥から食道へと、食べ物を送る仕組み)の成長具合を考えながら、調理の計画そのものができることが望ましいと思います。咀嚼(そしゃく)と同時に、食べ物を飲み下す嚥下(えんげ)機能の把握が大切です。

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食物を認識して噛みくだき(咀嚼:そしゃく)、飲み込みやすくして、口の中(口腔)から咽頭へと食物を送り込みます。その後咽頭から食道、食道から胃へと食物を送り込みます。一連の流れを「摂食・嚥下」
出典:栄養ケア倶楽部 https://www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/

飲み込みやすいお餅のレシピについて

飲み込みやすさに注目したとき、お餅の温度も問題となります。お餅は冷めた方が粘つきが強くなります。子どもが食べやすいようにとお餅を冷ますと、ノドに詰まりやすくなってしまいます。熱すぎない程度に食べやすくするには、水分も摂れる汁物がおススメです。

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出典:食品安全委員会「食品による窒息事故」評価書

汁物にした場合でも、なるべくスプーンの使用は控えた方がいいかもしれません。食べやすく小さくした餅をスプーンですくうと、ツルッと口に吸いこむような流れで丸のみしてしまう可能性が高まります。しっかり噛み進めるのに適した食器の検討をお願いします。

1.食べ物を安全にしたら 2.大人が危険から回避させる

 食べ物の詰まりを原因とした子どもの窒息事故については、食材が何かも大事ですが、同じぐらいに子どもの食べ方、特に口の中に食べ物をほお張りすぎたことで、調理時の食材の大きさに関係なく、飲み込みきれずに窒息するケースにも注意が必要です。

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出典:食品安全委員会「食品による窒息事故に関するワーキンググループ」まとめ案

5歳児であっても、ひと口量に大きなバラつきがあることが判ります。このような子どもの不安定さに委ねるには、お餅はあまりに危険な食べ物です。食べる前に子どもたちと安全な食べ方について確認しあうと同時に、万全な監視の目を向けることも忘れてはいけません。

お行儀よく落ち着いて食べる意味を考える

特に、対策すれば避けられる保育の事故の防止策を仕組化していくには、まずなによりも付き添う大人の思い込みを捨てることが大切です。窒息事故の要因をみると、調理の方法以外にも、ご飯を食べている子どもの行動も窒息のきっかけとなります。

昼食をふざけながら食べない、口にモノを入れたまま席を立たないのは、お行儀よく食べるという教育的な意義のほかに、話す、席を立つ(運動する)と呼吸が活発になって、モノを飲込むときに、普段であれば自然に閉じるはずの、気道と食道とを隔てるフタ(喉頭蓋 ※)が、強制的に開いて誤嚥が起きやすくなる状況を防ぐ意味もあります。

出典:解剖生理をおもしろく学ぶ
出典:解剖生理をおもしろく学ぶ(増田 敦子著)

見守る際の対応が変わらない仕組みをつくる

子どもが静かに座って食べることの意義を、教育だけで考えていると、昼食に付き添う保育者個々の、子どもへの受け止め方しだいで、思いどおりにならない子どもに対する対応が変わることが予想されます。「一度でマナーを覚えこませる必要はない」と思った瞬間、子どもを見守る理由がなくなり、子どもから目が離れて事故への対応が遅れます。

子どもへの働きかけの目的について、その一面だけを見ていると、食事どきの窒息事故のように安全対策がおろそかになることがあります。保育にあたっては、子どもの命にかかわる重大な結果にいたる、プロセスの理解が欠かせません。保育者個人の経験則に関係なく、子どもの個性に関わりなく、保育の安全対策について統一できることが望まれます。

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ついたお餅は大人が消費して、子どもは調理室で調理された食べやすいお餅を、たのしく食べるのはいかがでしょうか。高齢者は、食べなれた思い込みから(衰えに気付かずに)窒息事故が起きます。子どもは摂食機能の成長に対して、食べ物が合わずに(合わなくて危険であることを判断できずに)窒息事故が起きます。

高齢者とは背景が異なるので、子どもの事故要因に合わせた、安全な保育環境をつくっていただき、子どもたちのために、たのしい正月行事を実施してくださることを願っています。

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