子どもの噛み跡や引っ掻き傷をお迎えまでに消してしまえる手当て方法はありませんか?と今も昔もたくさんご質問いただきます。噛まれた箇所を揉んだり、噛み跡が腫れてから慌てて子どもの肌に保冷剤を当てて、肌を急激に冷やしてしまう失敗も数多く見受けられます。噛み跡を揉んだり、冷やしすぎは反対に傷を悪化させるので注意が必要です。
残念ながら、ミミズ腫れになった子どもの噛み跡や引っ掻き傷を都合よく消す魔法はありません。噛み跡は内出血と炎症による腫れが原因です。内出血しはじめた早い段階に冷やして内出血を抑制することが必要で、応急手当として「氷のう」の使用をおすすめします。
※ 氷嚢(ひょうのう)
「氷片や水を入れて患部を冷やすのに用いるゴム製などの袋」
噛み跡や引っ掻き傷は均一に患部を冷やします
保育園や幼稚園で子ども同士が噛み合う事故が起きたら迅速に、タオルの上からたっぷり氷水を入れた氷のうを患部周辺に広く密着させて、15分冷やすこそが効果的です。しかし患部が「0度以下」の状態になっては凍傷を起こすので冷やしすぎには注意が必要です。
氷のうを常備している保育施設は少なくなっていますが、救急箱の中にひとつ入っていると重宝します。無くても「代用」できますが、有効性を知っていて取り急ぎ手元にあるもので代用するのと、何でもいいよと適当に擬似品を使うのとでは大きく意味が変わります。
噛み跡には迅速に、じっくりの処置が効果的
急いで冷やそうと保冷剤などをタオルにくるんで、そのまま患部に当ててしまうこともあるかもしれません。そんなふうに保冷剤や氷を直接タオルにくるんで患部に当てると、硬いために患部と接している面積が少なくて、時間をかけたわりに患部に対して冷え方にムラが出ます。ムラが出ると内出血が進んで、患部の傷あとが残ることにつながります。
接地面を多くしようと無意識に押し付けたり、傷あとが消えやすいなどと勘違いして保冷材の上からグリグリと揉んでしまう姿が見られることがあります。揉むと傷は消えるどころか悪化して、内出血が広がった結果、派手なミミズ腫れが残ることになります。
噛み跡や引っ掻き傷を揉んでも効果がない理由
噛まれたところや、引っ掻き傷を揉む行為は間違いですから信じていた保育士はすぐに改めましょう。噛まれた跡を揉むのは、内出血で血が固まって血行が悪くなるので、揉んで血行をよくしながら同時にその内出血を吸収(?)させようと考えてのことのようですが、揉むことで仮に血行がよくなったとしても残念ながら内出血の傷口を広げる可能性が高いです。
実際に揉んだら傷あとがキレイになったというのは、恐らく揉んだだけではなくて同時に冷やしていたことが多くのケースで考えられます。まずは冷やした効果が出ていたことと、揉んだつもりで、内出血した内部の傷口をほどよく圧迫した効果が生まれて、出血量が偶然な形で抑えられたと考えると、たまに上手くいく場合のツジツマが合うように思います。
砂糖で揉んでも血行はよくならないので氷嚢で冷やす
その他にも砂糖(水)をすり込みながら揉みなさいなんて知恵袋も披露されているようですが、傷の応急手当ということに関していえば、科学的根拠は一切なくて効果も疑わしいものです。なぜ効果があるかのように言われながら砂糖をすり込んだのでしょうか。
砂糖の摂取はカラダを冷やすとの東洋医学的な話があります。それ以外にも料理で「コーラ煮」といった、砂糖を使ってスジ肉などを柔らかく煮たりします。砂糖がお肉を柔らかくしたり熱を取るイメージから、血行をよくする効果があって青あざやコブなどを消すと考えられてきたようです。しかし大事なのは砂糖で揉むことではなく氷のうで冷やすことです。
氷嚢は打撲や発熱そして熱中症にも使えます
氷のうのいいところは口が大きく水と氷が入れやすく、たっぷり入れてもビニール袋と比べて安定感があるので、患部の状態によって一気に冷やしたい時や、ゆっくりと時間をかけて冷やすなどといった調整がしやすいこと。特に、子どもが転んで頭をぶつけた時や足を挫いたりして腫れた場合など、その腫れた患部に対して冷やすには、氷のうはとても有効です。
夏場の熱中症についても子どものカラダの熱を吸収・放散させる効果が高く、使い勝手もいいので、もし保育園の救急箱の中に入ってない場合には、値段が高いものではなく場所もとらないので、ひとつだけでも購入して入れておくことを強くお奨めします!
噛み跡の保育園で上手な応急手当のコツとは
園庭や公園で遊んで擦りむいた小さな怪我は、「子どもは元気にあそぶのが仕事!元気にあそんだ証拠」と喜ぶお母さんであっても、クラスメイトから噛まれたケガに対しては、『うちの子は先生に見てもらえてないんじゃないか』と不安を抱くものです。
適切な処置を行なうことで悪化することを防ぐとともに、怪我をした子どもや、その場にいなかった親御さんの不安を解消してあげられる日ごろからのコミュニケーションも、保育者に求められる応急手当の一環です。噛み跡を消してしまうような都合のよい魔法に頼らずとも、保護者から喜ばれ、信頼につながる応急手当を身に付けていきましょう。