日本病児保育協会の「保育スキルアップ・オープンセミナー」(2014年9月27日(土)10:00~11:45)救急救命講座「5~6分が生命の分かれ目! 保育の現場に潜む『子どもの窒息』即時対処法」受講者募集のお知らせです。子どもの救命処置というと、子どもが高いところから落下したりしたことで負った大きな怪我への手当てを思い浮かべることが少なくありません。
しかし保育現場で子どもが命を失う深刻な結果を招いた事故の多くが、実は「窒息」(息ができなくなる出来事)です。窒息事故はあらゆる保育現場で起こっています。窒息事故に対する処置は地味に見えますが保育者にとって必須のスキルです。その重要性を知っている日本病児保育協会ならではのセミナーといえるでしょう。
<セミナー内容>
0~4歳までの子どもの死亡事故の上位は「その他の不慮の窒息」です(厚生労働省 平成24年人口動態調査より)。
保育者が行うことができる一次救命処置は、「予防」 「窒息の解除」「心肺蘇生法」「AEDの使用」の4要素で構成されています。(中略)今回の講座では「窒息の解除」のための救急救命スキルを身につけていただくことができます。
一般財団法人 日本病児保育協会
「保育スキルアップ・オープンセミナーのご案内」
窒息事故はあらゆる形で保育現場で起きている
保育現場で窒息事故といえば、「認可外保育所の午睡」というのが多くの保育者のイメージです。これは厚労省が発表した『保育施設における事故報告集計』にまつわる報道の影響ですが、実際はもっと多岐にわたります。
発生年 | 月日 | 場所 | 年齢 | 原因 |
---|---|---|---|---|
2004. | 11.17. | 園外保育 | 6歳児 | 川に転落 |
2005. | 04.19. | プール | 3歳児 | 水泳講習 |
2006. | 07.25. | 園庭 | 1歳児 | 園栽培のミニトマト |
2007. | 12.18. | 保育室 | 1歳児 | おやつのリンゴ |
2008. | 12.15. | 保育室 | 0歳児 | うつぶせ寝 |
2009. | 08.18. | プール | 5歳児 | 水泳講習 |
2010. | 10.29. | 保育室 | 1歳児 | おやつのカステラ |
2010. | 09.27. | 保育室 | 0歳児 | 逆流による誤嚥 ミルク |
2011. | 04.25. | 保育室 | 1歳児 | 逆流による誤嚥 給食の豚汁 |
2011. | 04.19. | プール | 3歳児 | プールあそび |
2012. | 02.15. | 保育室 | 1歳児 | おやつの白玉団子 |
2012. | 07.17. | 保育室 | 2歳児 | おやつの白玉団子 |
2012. | 07.20. | 園外保育 | 5歳児 | 川で溺水 |
2013. | 06.23. | 保育室 | 2歳児 | 木製おもちゃ おままごと玩具 |
2014. | 09.08. | 園外保育 | 5歳児 | 川で溺水 |
類似した気道異物や溺水による窒息が繰り返されている
窒息(呼吸ができない状態を招く出来事)は、次の3つ「口や鼻がふさがる」、「気道に異物が詰まる」、「溺れる」が原因として考えられます。保育現場でも気道内異物や溺水による窒息事故が多いことが判っています。
ひとつの事故だけを見て、「私たちは、あれはやっていない、これは出していないから大丈夫」と、決して安心をしていられないほど多様です。さらに原因を見比べると、その中でも類似したモノや出来事が繰り返し出てきます。
川での園外保育と、プール指導中の溺水。同年に繰り返された白玉団子を食べての窒息など、再発防止に向けて情報が十分に共有できていたら、窒息を予測しての対策が行なわれていたら失わずに済んだ命があったことでしょう。
保育者にとって窒息事故が本当に怖いわけ
子どもが食事をする場面で窒息は日常的に起きています。しかし一瞬、苦しそうな顔はするものの、軽くせき込むだけで終わるので、「ちょっとノドにひっかかった」程度で終わって、ヒヤリハットとしても認識されていません。
咀嚼がうまくできずに、ノドに食べ物を詰まらせてばかりの子がいた場合にも、保育者が食べ物を掻き出そうとして、指を噛まれた話をよく聞きます。
ヒヤリハットとしても認識されないということは怖いもので、子どもがノドに詰まらせたことではなく、保育者が子どもに噛まれたことがヒヤリハットとして共有されるという残念な事態をつくり出していきます。
命は救えても脳に障害を残す窒息事故の怖さ
食べ物によって呼吸する道(以下、「気道」)がふさがる状態には、食べ物によって、気道を呼吸が全く通らない完全気道閉塞と部分的に気道がふさがって普段通りには呼吸ができない不完全気道閉塞があります。
給食やおやつ中に数多く起きているのは、ノドに引っかかった程度の軽い軽い不完全閉塞です。ケガは小さくても跡が残るので、記憶にも残ります。しかし窒息は軽いと何も残らないので、情報が共有されずらいものです。
読んでくださっている皆さんも、子どもがノドに食べ物を軽く詰まらせた姿を見た経験があることと思います。どの子どもも完全閉塞していた可能性があったことを思い起こして、今後は共有してくださることを願ってます。
『子どもの窒息』即時対処法セミナーで学べること
完全気道閉塞したときの対処方法の習得は、とても大切ですが、一度、完全閉塞してしまうと、命は助かっても脳に障害を残す可能性が高いことが窒息事故の本当の怖さです。できる限り不完全閉塞で留めたいですね。
そのためには、形だけの窒息の対処を体験するだけではなく、子どもの窒息ならではの対処法を知って、実践できるようになることが重要です。それは保育者の強みを生かす部分でもありますので、難しく考えずにご参加ください。
以下、検討中の『子どもの窒息』即時対処法セミナーの題材
- 窒息で子どもが亡くなる仕組みを考える
- 人工呼吸のコツ ・完全閉塞していても人工呼吸が有効な理由について
- 保育現場の窒息事故事例の検討 ・保育を想定した気道異物の除去
- 軽傷 OR 重症の見極めポイントと、119番通報のタイミングほか
『保育現場の「深刻事故」対応ハンドブック』直売
講師、遠藤のコラムが掲載された『保育現場の「深刻事故」対応ハンドブック』も会場で購入いただけます。子どもの命を失う結果を招く深刻な事故について、心理学、医学、法、そして救命処置の観点で書かれた初めての本です。
2015年度から、いよいよ保育中の事故発生時に地方自治体への報告が義務化されます。事故を最小で留めることも大事ですが、再発防止のために適切に報告することも今から考慮が必要です。ぜひ手に取って読んでください。
防げるはずの深刻事故を二度とくりかえさないために。
医学・法律・心理・保育等の専門家と、遺族(保護者)が、それぞれの知見と願いをこめ、保育と子育て支援の全関係者に向けて送る画期的な書。