日本版蘇生ガイドライン2010準拠 LSFA こども事故と応急手当アップデート

2011年1月31日

Life Supporting First Aid (通称 LSFA)とは、街中の事故でケガをした人や、突発的な体調不良で(状況によっては心肺停止に至って)動けなくなった人に寄り添う、緊急の事態に対処するための応急手当を一般市民が学ぶための普及プログラムです。

突然、傷病者に出くわしたときでも、医者や看護師といった医療資格をもたない人が戸惑いなく救急車を呼べる。そして、救急車が到着するまでの間に、呼吸がなければ心肺蘇生を行なうなど、誰もが応急手当を行なえるように、国際的な合意に基づいてつくられた各国の蘇生ガイドラインに従って、それぞれの普及・教育プログラムが開発されています。

LSFA は日本版蘇生ガイドラインに基づきます

 医療技術の発展や、命を救ったり、ときに救えなかった知見を世界中で幾度となく積み重ねることで、幾度となく応急手当の形も姿を変えています。昨年の2010年末にも、様々な研究論文をもとに、5年ぶりに日本版救急蘇生ガイドラインが新しくなりました。

そして今年、LSFA プログラムも正式に、2010年版の日本版のガイドラインにそった新たな形へとアップデートされたので、2011年1月29日(土)、その講習内容の変更点について、プログラム普及に携わるインストラクターが学ぶ場が開催されました。

LSFA こども事故と応急手当アップデートの変更点

今回、アップデートされた内容は、誰もが理解できて素早く行動に移せることが主眼におかれています。まず目をひくのは、心肺停止について判断するときに勘違いする人も多く、取り掛かるまでに時間がかかりすぎる原因と言われていた呼吸確認の変更でしょうか。写真は、2009年の夏ごろのもので、呼吸確認のやり方の変更前の特徴がよく現れています。

写真は救助者の顔を傷病者に近づける「見る・聞く・感じる」と言われてきた方法です。これが行なわれないことになりました(行なっても間違いではありません)。呼吸の異常な様子を見落とさないように、傷病者の胸とお腹の動きを見て、普段通りの動きではない異常な状態であれば呼吸なしと判断して、次の心肺蘇生へと移ることが定められました。

日経メディカル2011年2月号「トレンドビュー」(転載)
蘇生のガイドラインを変更へ
心肺蘇生は胸骨圧迫からの開始が基本に

従来は呼吸を確認する際、傷病者の口元に耳を近づけ、胸部に手を置くなどして“見て、聞いて、感じて”呼吸を観察するとされていた。しかし、新ガイドラインでは胸部と腹部を見て呼吸を確認すればよい。
http://medical.nikkeibp.co.jp/ 日経メディカルオンライン

LSFA-Children's 子ども版応急手当の背景

 呼吸なしと判断された次にくる心肺蘇生は、これまで開始直後に補助呼吸を2回吹き込んでから、胸を押す胸骨圧迫30回を行なう手順でした。蘇生ガイドライン2010は、まず「胸を押しはじめる」手順に大きく変更されました。人工呼吸は難しい、実施に抵抗があるという救助者の心理的障壁を取り除いて、応急手当の実施者を増やすことが目標です。

身近な人が倒れたとき救急車を呼ぶだけでも慌てたり、街中で倒れている人に対して、自分がやらなくてもほかの誰かが助けを呼ぶだろうと見過ごされることで、救急隊の現場到着が遅れたり、AEDも使われず救える命を救えないケースがあります。少子高齢化が進んでいる現代では、不慮の事故から子どもの命を守る人を増やすことが求められます。

不慮の事故による子どもの傷病を未然に防ぐ

一般的な救命講習のほとんどが大人の傷病者を対象としたものばかりです。しかし子どもの事故が、大人の事故と同じとは限りません。子どもは窒息や溺水といった呼吸ができない事態に陥って命を落とす事故が多いことが知られています。そんな子ども特有の事故要因を分析して、予防にはじまる適当な応急手当を行なえることが望ましい社会の姿です。

また、蘇生ガイドライン2010では、救命の連鎖の最初のはじまりが「心停止の予防」に変更されました。応急手当は、心肺蘇生法などの手技の内容だけを見ると、心臓や呼吸が止まってからの対応方法と考えられてきましたが、これからは「心停止や呼吸停止となる可能性のある不慮の事故による子どもの傷病を未然に防ぐ」意識をもつことが大切です。

傷病者を救命し、社会復帰に導くためには、「救命の連鎖」が必要となる。救命の連鎖は、1.心停止の予防 2.心停止の早期認識と通報 3.一次救命処置 4.二次救命処置と心拍再開後の集中治療の4つの要素によって構成されている。心停止の予防は、心停止や呼吸停止となる可能性のある傷病を未然に防ぐことである。
JRC(日本版) ガイドライン2010(確定版)第1章「一次救命処置」より

LSFA のほか応急手当に終わらず事故予防を学ぼう

LSFA の土台には蘇生ガイドラインが背景にあって、一般市民が数多く受講している消防署や赤十字の講習会と一緒です。さらに、LSFAの様々なプログラムの中でも、子ども版応急手当プログラム LSFA-Children's は、子どもの事故の対応に特化したプログラムとして、日本国内の子どもの事故事情とすり合わせながら、日本国内で初めて開発されました。

子どもの不慮の事故の予防から、子どもの心肺停止の対応までをトータルに学べるプログラムを受講した経験のある人はまだ多くありません。保育者のとって応急手当の知識と技術を学び、命にかかわる大きな事故を減らす環境をつくることは責務です。保育の事故で子どもの命が不用意に失われることなく、充実した保育が実践されることを願っています。

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保育安全のかたち

代表:遠藤/専門:保育の安全管理・衛生管理/保育事故の対策、感染拡大の予防、医療的ケア児ほか障害児の増加など医療との関わりが深まる一方の保育の社会課題の解決にむけて、保育園看護師の業務改革ほかリスク管理が巧みな保育運営をサポート

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