保育の事故報道と再発防止策

乳幼児突然死症候群と夜泣き

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 SIDS:乳幼児突然死症候群を防ぐためだと言っても、長年、保育現場で保育者が子どもに対してうつぶせ寝で寝かせる行為がなくなりません。乳幼児突然死症候群を防ぐためにやってはいけないとされる、うつぶせ寝のほか、暖めすぎたりタバコの煙に曝される環境がなぜダメなのか、実は保育者がよく分かっていないという声と関係があるのかもしれません。

乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome)とは、「元気に育っていた赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然死亡する病気」だと厚労省が定義づけています(「SIDSとは」)。あらためて乳幼児突然死症候群の予防について振り返ります。

保育施設で睡眠中死亡、6割うつぶせ…読売調査
 国の保育指針では、SIDS予防のためにうつぶせ寝を避け、十分配慮するよう指導している。読売新聞が情報公開請求で入手した個別事例の報告書を見ると、保育者が子供をうつぶせにして寝かしつけたり、睡眠中の見守りが不十分だったりしたケースがあった。一方、事故当時の保育士の勤務状況などについて、第三者を交えた委員会を設けて検証したケースは4件だった。委員会を設置しなかった理由として「死因が特定されていない」「検証委員会設置の規定がない」などが挙げられた。

SIDS予防に欠かせない赤ちゃんの睡眠リズムの理解

 乳幼児突然死症候群は睡眠中に起きます。赤ちゃんから高齢者まで、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しながら眠っています。レム睡眠は眠りが浅く、夢を見ながら記憶を整理しいています。対してノンレム睡眠は眠りが深く、心身に休息を与える時間帯をいいます。

しかし赤ちゃんから高齢者まで、健康な人であっても誰もがこの眠りが深い時間帯に無呼吸に陥ることがあります。無呼吸によってカラダが危険な状態になることを回避するため、脳から指令が出て、無呼吸以前より活発な状態で呼吸が再開されていきます。

夜泣きはSIDS:乳幼児突然死症候群の予防にも関わりが深い

もともと赤ちゃんは肺関連が未発達な部分が多くて基本は腹式呼吸です。か弱い呼吸を繰り返している中で突如、強制的に活発化する呼吸は、睡眠によって脳やカラダを休めている赤ちゃんの心身に対して少なくない負担をかけることは容易に想像がつきます。

赤ちゃんの寝かしつけをしていて、時間がかかりながらも、ようやく深く寝付いたなぁと安堵した矢先に、叩き起こされたかのように始まる赤ちゃんの激しい夜泣きの原因のひとつには、呼吸器官が未成熟な赤ちゃんならではの睡眠サイクルに対する自己防衛機能が関係しています。しかし、この自己防衛機能を妨げるのが乳幼児突然死症候群なのです。

SIDS予防の本質は無呼吸にさせないこと

 脳の指示で止まった呼吸を再開させる「覚醒反応」が起きることなく、無呼吸になったまま死に至るというのが乳幼児突然死症候群だと考えられています。赤ちゃんの脳に何らかの原因があっただろうと推測されながら、それが何であるかは未だに分かってはいません。

しかし、乳幼児突然死症候群が無呼吸になった状態から引き起こされるというのであるならば、逆算して考えれば、乳幼児突然死症候群の原因となる何かをもって生まれた赤ちゃんも、仮にお昼寝中に無呼吸になることを防ぐことができれば、乳幼児突然死症候群では亡くならない可能性があることが分かったことになります。うつぶせ寝防止がここにつながってきます。

SIDS予防でうつぶせ寝にさせない理由

うつぶせ寝や、タバコの煙に覆われた環境、そして柔らかい布団の上や厚着をして寝かせることは、その全てが、無呼吸になった状態に近いほどカラダの中の二酸化濃度を高める(上手く酸素を取り込めない状態をつくる)原因になるものばかりだと考えられています。

特に最近では、「うつ熱」によって呼吸中枢の働きが鈍って、睡眠サイクルに関係のない不自然な無呼吸が起こることも判明してきています(※)。あおむけ寝や固めの布団に寝かせるなど、無呼吸になりにくい保育環境をつくることを意識した行動が大切です。

出典:「SIDS予防7ヶ条」久保田産婦人科麻酔科医院 久保田史郎
高体温(発熱・うつ熱)の原因と予防法

SIDSと窒息事故は赤ちゃんの脳を破壊する

残念なことに保育所のお昼寝で0歳児が窒息して亡くなる事故が毎年起こっています。注意して見守っていながら、起こしにいくと息をしていなかった事態ばかりです。SIDSの理解はお昼寝中の不慮の事故を減少させるのに必要な根拠のある見守り方法につながります。

乳幼児突然死症候群もお昼寝中の窒息事故も赤ちゃんは息ができずに脳へ酸素を届けられない状態に陥ります。子どもの脳に酸素が届かない事態というのは、その子どもの脳に深いダメージを与えます。仮に亡くならなくても一生、子どもと家族は苦しみます。

子どもと保育を守るためにうつぶせ寝はやらないでおきましょう

乳幼児突然死症候群は未だに解明されていない病気ですが、乳幼児突然死症候群によって赤ちゃんが命を落とす工程は、ここまで書いてきたように、ほぼ判明しています。乳幼児突然死症候群は保育施設以外のケースも睡眠中に起きています。そして乳幼児突然死症候群の予防に限らずお昼寝を見守る保育士にとって、この「亡くなる工程」の理解は欠かせません。

少しでもぐっすりと寝かせてあげたいといった愛情から子どものことを思ってうつぶせ寝にしたのだとしても、SIDSや窒息が起きたら保育への信頼の全てを失います。子どもと保育を守るのは、うつぶせ寝をやらない自分自身だけであることを忘れないでいただきたいと思います。

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  • 筆者紹介
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遠藤 登(安全管理研修担当)

1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始しました。2011年お昼寝中に心肺停止した園児を救うことが叶わず現在の活動に至る。株式会社保育安全のかたち代表取締役/ 保育現場のリスクマネジメントをテーマとした書籍を執筆(単著・共著ほか)

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