保育の安全にむけ読んでおきたい うつぶせ寝・プールなど保育事故の検証報告書

 保育事故の検証報告書を集めました。重大な保育事故は、地方自治体の検証が実施されます。死亡事故等について検証が行なわれることで、再発防止にむけた取り組みが進むことが期待されます。いうまでもなく、すべての保育施設と、職員は実際に類似事故を回避する役割を担っています。園生活における事故リスクはゼロにはなりません。自ら安全に配慮するとともに、事故検証報告書にある提言等と照らしながら、危険性を見落とさず備える必要があります。

杜撰な事故対応が問われた訴訟の多くで、原告側の「注意義務を怠った」という訴えに対して、被告側は「見守りに努めていた」が「なぜ起きたかは判らない」と返しています。これでは「頑張ったつもりだが、何をしたらいいかが解っていなかった」と言っているようなもの。事故が発生してから、「やっていたつもりになっていた」と気づかされることがないように、事故検証報告書を読むことで、客観的にふり返って保育を改善する機会にしていきましょう。

午睡・プールあそび・食事ほか保育の事故検証報告書

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事故防止のガイドラインと保育の事故データベースで補足

保育の安全対策には、ガイドラインなどで求められる保育体制の水準を維持するためのセーフティマネジメントと、子どもの発達や発育に合わせて、想定される危険性に備えるリスクマネジメントを必要とします。自らの保育を振り返る視点に立って、その事故を招いたプロセスを読み解き参考にすることが大切です。数多くある事故報告書も参考にしていきましょう。

保育施設における事故防止と事故発生時の対応の推進に向けた「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」がつくられたおりに、各自治体への重大事故の報告が義務付けられました。特定教育・保育施設等における事故情報データベースに掲載されつづけている事故事例を参考にしながら、保育の事故対応について技能を高めましょう。

  1. 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン
    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/index.html#guidelines
  2. 特定教育・保育施設等における事故情報データベース
    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/index.html#database

(※)プール事故死した3歳長男「生と死」の意味はどこにある…法廷の両親の思い、「再発防止」の願いは届くか
(2014.12.21 産経ニュース)
こうした現状を、名古屋大学の内田良准教授(教育社会学)は「教育現場の多くの事故は『不可抗力』とされる。そのため、次の事故を起こさないための事実究明と共有が行われていない」と批判。「対策を怠ったから起きた事故がたくさんある」と、事実究明と情報共有の重要性を強調している。それは「息子の死を再発防止につなげたい」と、裁判にかける両親の思いと共通するものだ。

「息子の死を再発防止につなげたい」(※)遺族や保育の事故を検証した関係者の想いに応えるために、あなたの目の前で起こる同種ながら、別の、重大な結果を招く事故に対応できるように、保育関係者がこれらの報告書を読んでいただけることを願っています。

プール活動や川遊びなど水あそび関連事故の検証報告書

  • 消費者安全法第 23 条第 1 項に基づく事故等原因調査報告書(消費者庁Webサイト)
    ※ 保育のプール活動で、監視役の設置が義務付けられたはじまりの事故
    - 平成23年7月11日に神奈川県内の幼稚園で発生したプール事故 -
    https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_003/

保育安全のかたちの解説記事

プールあそびの危機管理を大和市幼稚園教諭のプール水死事故から考える
 大和市の学校法人西山学園「大和幼稚園」のプール遊びの水死事故で、業務上過失致死罪に問われた元担任教諭に対して、求刑通り「罰金50万円の判決」が出ました。この事故が起きたひとつひと

本件事故については、映像記録など客観的な証拠がなく、また、関係者の口述からも、男児が何をきっかけに溺れたのかを断定することはできなかった。しかし、男児の溺水が死亡につながった原因として、(1)プール活動中の園児の監視体制に空白が生じたために発見が遅れた

保育安全のかたちの解説記事


さいたま市保育園のプール死亡事故報告書を読み解いて安全なプール開きを実施しよう
 猛暑が予想される今夏。梅雨明けとともに水あそびやプール開きを考えている保育施設も多いことでしょう。同時に水あそびの規模やプールの大きさに照らして一律に安全対策を求められても困ると

・国のガイドラインに示されている「監視を行う者とプール指導等を行う者を分けて配置し、また、役割分担を明確にする。」ことについては、保育士の配置基準を満たしていることで足りるものと、誤った解釈、判断をしていた。
・監視者と指導者の2人で対応する役割分担の認識が不十分で、少なくとも事故が起きたとき、監視者は、プールの監視に専念していなかった。

保育士は、多摩川における園外保育の経験がなかったことから、報告の際、園長が提案した水遊び場所の位置関係が確認できなかったものの、園長自身が園外保育当日の芝滑りが終わった頃、現場に赴き、保育士に水遊びの場所を教えることで決着していた。また、園長もD保育士に計画全般にわたる詳細な報告を求めなかったために、危険な場所についての安全性の確認はしていなかった

  • 京都市認可保育所「せいしん幼児園」に対する調査報告書(京都市Webサイト)
    - 平成26年7月30日に園屋上に設置されたプールにおいて発生した事故 -
    http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000173990.html
    https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/page/0000173990.html

本調査では原因を断定することはできなかったが,いずれにせよ,発見されるまでの一定の間,呼吸停止状態があったことが認められる。またプール活動における監視体制の役割分担が不明確であったため,その瞬間を見ていた者はいなかった。

うつぶせ寝による窒息ほか午睡関連の事故報告書

・ 有資格者の不足等で保育における知識や技術などの専門性及び保育や雇用管理等の記録整備などが不十分な中で、古くから当該園を運営してきた園長の経験を頼りに運営
・ 都はこうした園運営に対して、改善指導を行うものの、指導監督基準に適合しない指摘事項が多岐にわたるなど、改善指導が長期化。日常的な運営指導や助言も不足

本件では、保護者は12時20分から45分には「ぐったりしていて、一見明白にチアノーゼの症状が出て顔色が紫色に変色し、目もうつろであった」と重篤な症状が見られたと主張しているのに対し、当該施設はそのようなことはなかったとしており、双方の主張が異なっていることから、本検証委員会ではこの点について検証することができなかった

事故当日の A 君の寝かしつけ方については、子どもに安心感を与えるためという理由で、バスタオルを丸めて抱き枕のようにして抱かせて寝かしつけていたとのことである。また、特別指導検査時の記録に、「タオルに頬が付いていた」と記載されている。

心臓マッサージの開始時間は、119 番通報以降のどのタイミングで始められたのかは不明である。また、午睡チェック表をまとめて記入した時間は、119 番通報後、救急隊到着前とのことだが、正確な時間は不明である。本児に関する事故当日の午睡チェックの記載は、その都度チェックしたものではなく、119 番通報後、保育士の指示で、保育従事者が事後的にまとめて記載したもの

白玉団子による気道閉そくなど食事時間関連の事故報告書

事故発生時
保育士Aは,当該児童を寝かせようと思い,当該児童の両脇に手を入れてゆっくりと抱き上げたところ,当該児童が一瞬ワッと泣き,ヒュッという呼吸音がして,泣き声が途中で止まった

本件事故の原因が、本児に原形の白玉団子が提供された点にあることは明らかであるが、この背景には、各職員の職務分担が不明確で、各職員が、「誰かが適切な対応をとる」あるいは「誰かが問題ないと判断したのであろう」と考え、危険性が指摘されなかったという問題がある。

保育施設における重大事故の検証に関する考察

資料1-A

提言1.
・保育士一人ひとりが事故発生後すぐに記録する様式を定め、それをもとに行政が詳細調査を行い、事故概要をとりまとめる報告様式とするべき
提言2.
・児童虐待の検証制度と同様、国・自治体双方に重大事例の分析の責務を規定すべき。
・あわせて、重大事故の検証に関する役割分担や検証方法を示すガイドラインを策定するべき。
提言3.
・児童虐待の検証制度と同様、自治体の検証結果を国にて収集・分析して公表するべき。
・詳細結果の公表とともに、現場ですぐに使える形式での公表・データベース化をするべき。
提言4.
・平常時は質向上の指導、事故発生時には速やかに事故後の対応にあたるための専門職員を各自治体に配置するべき。

当初、保育所に対する聞き取りでは、適切な見守りの中で発生した出来事として捉えていた本件であるが、ご遺族様による詳細な聞き取りの結果、必ずしも適切な見守りではなかったことが後日推察されるなど、種々の問題点や市としても反省すべき点が浮かび上がってきた。
「かしの木保育園における事故報告書」P.2 はじめに

  • 南粕谷保育園やけど事故検証委員会報告書(愛知県知多市)
    - 2018年7月、南粕谷保育園において給食のスープをかぶりやけどを負った事故 -
    https://www.city.chita.lg.jp/docs/2018081000015/

保育安全のかたちの解説記事

保育園給食の高温スープを1歳児にこぼさせた火傷事故の要因予測と再発防止策
 愛知県知多市にある保育園で1歳児が大やけどを負うといった事故が発生しました。会見によると「子どもの手の届く範囲にカートを入れたのは落ち度があった。救急車を呼ぶべきだったが、職員の

本児が熱いスープを浴びることとなった原因の一つとして、事故当日は、誕生会行事があり食数が増えたこと等の理由から、通常より給食完成時間が延びたことが挙げられる。その結果、適温に冷ますための十分な時間を確保することができず、保育室へ搬入した際のスープの温度は70度程度あった。

保育体制の不備や職員の虐待など運営管理が問われる事故報告書

保育安全のかたちの解説記事

葉山町保育園の転倒して腹部損傷を負った事故と保育所職員の応急手当の課題
 神奈川県三浦郡葉山町の保育園で発生した事故の検証報告書を振り返りながら、子どものケガの調べ方に関する保育者の課題と応急手当をするときに心掛けたいポイントについてお届けします。本件

保育所としては、園児に通らないように指導していたということであるが、保育室の廊下とつながっており、園児が入る可能性のある廊下に障害物となるサッカーゴールが置かれていたことに課題がある

死を招いた保育―ルポルタージュ上尾保育所事件の真相

死を招いた保育―ルポルタージュ上尾保育所事件の真相

猪熊 弘子
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本件事故ではっきりしているのは、2人の担任保育士は被害児童の所在を最終的に確認したのが8月10日10時30分頃であり、それ以降11時35分頃までは全く被害児童の所在、動静を含めて2人の保育士は勿論、上尾保育所の保育士らが正確には把握していない

A用務員による当該児の「投げ出し行為」及びその後の不適切な対応

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)違反
『(懲戒に係る権限の濫用禁止)第九条の三 児童福祉施設の長は、入所中の児童等(法第三十三条の七 に規定する児童等をいう。以下この条において同じ。)に対し法第四十七条第一項 本文の規定により親権を行う場合であつて懲戒するとき又は同条第三項 の規定により懲戒に関しその児童等の福祉のために必要な措置を採るときは、身体的苦痛を与え、人格を辱める等その権限を濫用してはならない』

どのような形状で納品され、組み立て作業がどのように行われたか等の詳細は確認できる資料が残っていない。梯子部分の高さが変えられる構造となっており、遊具安全点検報告書によると梯子部分は、(中略)しかし、どのような理由で梯子の傾斜を変更したのかは不明

以上、計 16点の保育事故の検証報告書也

  • 筆者紹介
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遠藤 登(保育士 / 防災士)

株式会社保育安全のかたち代表取締役 / 1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始。 【専門分野】保育防災・減災対策、保育園看護師のキャリア支援、保育事故の分析手法「チャイルドSHELモデル(c-SHEL)」の教育および、リスクマネジメント研修。著書「保育救命」~保育者のための安心安全ガイド~ほか

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【読者の声】園で子どもたちをのびのびと遊ばせてあげたいけれど、安全面が気になってしまって、禁止ばっかりを作りがちでした。でも、ここにのっている、ハザードマップを作れば、事前に予防ができそうだし、とっても簡単なので、忙しい私たちでもできそうなので、早速やってみたいと思っています。 怪我の対処法も、チャート式で簡潔になっているのでわかりやすいです。かなりオススメですよ。【評価:★★★★★】

【読者の声】保育現場のケガの手当て、事故対応の決定版といえる1冊。チャート式で、緊急時に何をしたらいいかの判断がわかりやすいと大好評。ハザードマップをつかったヒヤリハットの対応から、不安の大きな保護者対応まで、これ1冊で準備できます。【評価:★★★★★】

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