保育現場で使える応急手当

窒息事故の防止にと口内に指を入れたり水を飲むのが間違いで危険な理由

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 窒息事故について対応する研修を行なうと、「指を入れて掻き出そうとして指を噛まれた」という悩みや、「水を飲ませるのは?」という疑問を尋ねられます。そのほかにも背中を叩くタイミングがズレていたり、叩き方が弱弱しい実例を聞くこともあります。

これらは効果が低いばかりか、子どもを危険に陥れる可能性も高まります。指を入れない、水を飲ませないで別の方法が選択できる、適当なタイミングで背中へ効果のある叩き方を行なうためには、保育者も、発育における「摂食と嚥下」の仕組みを知ることが大切です。

食べ物をノドに送り込む摂食・嚥下の仕組み

 まず、食べ物を飲み込むという行為は、噛んだ食べ物がノドを通り抜けて、ただ胃に落ちるということではありません。飲み込みやすく噛みくだいた食べ物を、舌などを使ってノドの奥へ、ノドから食道へ、そして食道から胃へと順序良く送り込む一連の動きを、「飲み込む」といっています。全体を「摂食」、飲み込むことを「嚥下」といいます。

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食物を認識して噛みくだき(咀嚼:そしゃく)、飲み込みやすくして、口の中(口腔)から咽頭へと食物を送り込みます。その後咽頭から食道、食道から胃へと食物を送り込みます。一連の流れを「摂食・嚥下」
出典:栄養ケア倶楽部 https://www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/

噛む、飲むだけではなく、摂食(せっしょく):咀嚼して、嚥下(えんげ:のみくだすこと)するまでの一連の仕組みによって、舌で、ノドで、食道で、食べ物を送り込んでいるイメージをもっていただいて、子どもが食べ物をノドに詰まらせたときには、子どもの様子に応じて対応を変えられるようになることが望ましいと思います。

嚥下で起きる絞扼反射と誤嚥とを区別する

子どもたちが命を落とした事故の原因や、窒息事故時の対応として、背中を叩けと言われる状況は、主に咽頭期の障害である「誤嚥」を指しています。しかし保育者が、誤嚥と混同して頭に描いているイメージは、口腔期の障害の「絞扼(こうやく)反射」というものです。

絞扼反射(こうやくはんしゃ、choke reflex)とは、舌根部、咽頭部後壁、口蓋扁桃部などを刺激により誘発される反射のことである。咽頭反射(いんとうはんしゃ)、催吐反射(さいとはんしゃ)などとも呼ばれる。
出典:南山堂医学大辞典 ISBN 978-4525010294

子どもが食べ物を口に入れてすぐ、オエッと苦しそうに「えづく」、あの姿です。舌の動きでノドへ食べ物を送り込むときに、カラダが過敏に反応して絞扼反射が起こります。噛みくだき方が足りなかったり、舌をうまく動かせなかったり、食べ物に対する子ども自身の苦手意識が、無意識に絞扼反射を引き起こすこともあると考えられています。

嚥下のメカニズムの[咽頭期:いんとうき]では食べ物や飲み物がスムーズに食道へ送り込まれるように、食道の入り口が開き、同じタイミングで反射的に気管の入り口のふた(喉頭蓋:こうとうがい)が閉まるようになっています。何らかの原因でこのタイミングがずれると誤って食べ物が気管に入ってしまいます(誤嚥 :ごえん)
出典:栄養ケア倶楽部 https://www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/

絞扼反射に食べ物を指で掻き出してはいけない理由

 子どもが食べ物を口に入れてすぐ、オエッと苦しそうに「えづいた」ときは、できる限り子どもの気持ちを落ち着かせて、安心して吐き出せるようにすることが大切です。つい、子どもの口の中に指を入れて掻き出したくなりますが、かえって危険です。

食べ物が、舌の奥やノドの奥の壁に触れて、過剰に反応して吐き出そうとした状態ですので、指を入れれば、食べ物を押し戻すことになったり、掻き出す指によって、さらに舌根や咽頭部後壁を刺激して、つよい嘔吐を引き出してしまうことになりかねません。

誤嚥にならないよう呼吸を観察しつづける

オエッと声が出たということは、息を吐き出している状況を意味しています。その時点では「窒息」ではないと考えられます。しかし食べ物を食べるときに、閉まるはずの気道の入り口が開いてしまっている状態なので、反対に誤嚥を引き起こしやすい状態でもあります。

出典:解剖生理をおもしろく学ぶ
出典:解剖生理をおもしろく学ぶ(増田 敦子著)

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そんなときに水で流し込ませようとすると、水や流された食べ物が、気道に入って誤嚥になることもあるので注意をしましょう。背中をやさしく撫でてあげたりして、子どもの気持ちを落ち着かせながら、できるだけ子ども自ら吐き出させます。保育者は、子どもが苦しそうにしながらも、呼吸が普段通りにできていることを観察しつづけます。

つよい咳が出る・出ないが窒息事故で背中を叩く判断のポイント

 「呼吸が普段通り」というのは、たとえば普段だったら聞こえないような変な音が聞こえたり、肩で大きく呼吸する、または唇の色や顔色が血の気を失っていく様子のことです。窒息が進行して危険なので、早急に背中を、つよく叩く必要があります。

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苦しそうに咳をしはじめた場合は、気道にモノが入った可能性が高いですが、つよい咳ほど、苦しそうにみえますが、軽い窒息であって、気道に入った異物を自ら出そうとする防衛反応なので、咳を落ちつかせるのではなく、まず咳が出やすいように介助します。

背中を叩くのは出なくなった咳を出させるため

咳が弱弱しくなった、普段通りの呼吸の様子ではなくなったら、即座に背中を叩きはじめます。胸をドンドンと叩いて、詰まりを取る行為と同じようなイメージを持つことも多いですが、背中を叩くのは、つよい振動によって、再度、止まってしまった咳を出させることが目的です。ここで遠慮して弱く叩いては、咳を出させることが難しくなります。

また、このタイミングで水を飲ませることも問題があります。すでに気道に異物が入ってしまっているので、食道に流れる水に効果はありませんし、もし食べ物と同じように水まで気道に入っては、救うどころか窒息の症状を悪化させてしまいます。

窒息事故はアクシデントではなく予防できる事故

窒息とは、呼吸が阻害された状態を言います。聞き取れる声が出る、つよい咳が出るということは、問題はありながらも呼吸の通り道があることを意味します。窒息事故時は、その呼吸の状態を観察して、判断した状況に応じた対応を選択することが大切です。

窒息前の予防に水を飲むなど食べさせ方を見直す

ここまで、食べ物を飲み込む、摂食・嚥下の仕組みとともに、子どもの口へ指をいれない、水を飲ませない理由について説明してきました。窒息事故は、子どものカラダの仕組みを理解して、対策ができていれば防ぐことのできる事故だと言えます。

水を飲ませるのは、詰まったから流し込むためではなくて、ひと口食べて、水分を摂って食べ物の消化をよくすることが、そもそもの目的だったはずです。まずは摂食・嚥下の仕組みを理解することで、子どもの発育に合わせて、どのように食べさせることが望ましいかを振り返っていただけるきっかけとなることを願っています。

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