保育の事故報道と再発防止策

保育事故の数字に出ない認可保育園と認可外保育所の安全管理の違い

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 毎年、厚労省から発表される「保育施設における事故報告集計」によって話題となる、「無認可保育所の杜撰な安全管理」の信ぴょう性を疑ったことはありますか?ここでは保育事故報告集計の数値の裏側にある認可保育所と認可外保育所の違いを考えます。

今回のポイントは「大人のための環境」と「子どものための環境」との比較です。認可保育所と認可外保育所の違いを考えるあたって、まずは東京都福祉局の『乳幼児の事故防止教育ハンドブック』に記載してある重要な一文をご紹介したいと思います。

乳幼児期の子どもは、大人と一緒の環境で過ごしています。しかし、子どもの身体・運動能力は大人と異なるため、身の回りのものが事故の危険原因となりうるほか、事故が起きたときの身体へのダメージが大きくなります(Ⅲ 乳幼児期の事故の特徴と保護者への事故防止教育の重要性)

大人社会に潜む子どもにとっての危険

 大人と子どもとが同じ環境に居ながら、子どもにとって何気ない身の回りのものが事故の危険要因となることが多いのは、大人の身体・運動能力に合わせた生活環境の中で、その身体・運動能力に見合わない子どもが、大人と一緒に過ごしているためです。

WHO(世界保健機関)では、大人が生活しやすいように創られた社会の中に潜む危険を、子どもが察知することは難しいと言っています。大人基準の社会において子ども特有の事故が起こりやすい背景を理解して、子どもにとっての危険を予知する必要があります。

むしろ認可保育園の安全管理のあり方が問われます

認可保育園は国の基準に従って、子どもが過ごしやすいように、子どもに適した環境が造られていることに対して、認可外は賃貸契約した既存の施設、要するに大人に合わせた環境で子どもは過ごしています。これは安全管理のあり方にも大きな違いが生まれます。

■ 大人のために設計された環境で子どもの「死亡・重症」事故の割合:36%
■ 子どものために設計された環境で子どもの「死亡・重症」事故の割合:9.3%
製品評価技術基盤機構(NITE)事故情報データ(2009)

認可外保育所では、子どもの生活に置き換えて、子どもの活動を援助しながら、少しでも行動しやすい環境になるように物理的環境を改善する必要があります。また改善しきれない場合について、割り切って子どもを近づけさせない工夫も重要になってきます。

認可保育園特有の安全の注意点が見えます

 子どもに適した認可保育園下での園児の死亡、重症化の事故が少ない理由が改めて判りましたが、安心はしていられません。少ないながらも認可保育園でも子どもの事故が起きている事実からは、認可保育園特有の安全への注意点が見えてきます。

■ 子どもの誤使用、不注意による子どもの事故:7.5%
■ 事故に関わる製品の問題による子どもの事故:10.4%
■ 大人の誤使用、不注意による子どもの事故:65.9%
製品評価技術基盤機構(NITE)事故情報データ(2009)

認可保育園といった子どもの成長に適した環境づくりが行われた場所では、子どもの理解力や行動が原因で事故が起こるケースよりも、圧倒的に大人(保育者)側の誤使用、ヒューマンエラーによって子どもの事故を起こさせる可能性の方が高いことが判っています。

子どもの命を奪う保育の事故報告をひとつでも減らす

必要に応じて子どもに対して安全教育を行ないながら、不慮の事故を減らしていくことは大切です。しかし子どもに対する保育者の見守り方や環境設定をあらためて見直して、ヒューマンエラーを間違いなく減らした方が子どもにとって充実した保育となるでしょう。

保育を仕事にする対応義務者のための保育の事故のリスクマネジメント
 保育を仕事にする者(保育所職員や幼稚園教諭、そして保育ママやベビーシッターなど)は、保育の利用者と保育の契約を結びます。保育の契約を結ぶと、保育をするにあたって、子どもの事故に対

繰り返しとなりますが、認可保育園でも認可外保育所でも子どもの命にかかわる重大事故が発生しています。不必要に子どもの命を奪われる保育の事故が減って、これまで以上に保育者や子どもの笑顔があふれる、ゆたかな保育が築かれることを願っています。

平成24年1月1日から平成24年12月31日までの間に報告のあった、保育施設における事故報告を取りまとめましたので、公表します。(厚生労働省)

○報告件数は145件あった(認可保育所…116件、認可外保育施設…29件)。
 ※145件のうち平成23年以前に発生した事故件数は51件

○負傷等の報告は127件あり、そのうち5歳(48名)が最も多かった。

○死亡事例は18件あり、そのうち0歳(10名)が最も多かった。

○事故の発生場所は、保育施設の室外(65名)が最も多かった。

書籍【保育救命】~保育者のための安心安全ガイド~

【読者の声】園で子どもたちをのびのびと遊ばせてあげたいけれど、安全面が気になってしまって、禁止ばっかりを作りがちでした。でも、ここにのっている、ハザードマップを作れば、事前に予防ができそうだし、とっても簡単なので、忙しい私たちでもできそうなので、早速やってみたいと思っています。 怪我の対処法も、チャート式で簡潔になっているのでわかりやすいです。かなりオススメですよ。【評価:★★★★★】

【読者の声】保育現場のケガの手当て、事故対応の決定版といえる1冊。チャート式で、緊急時に何をしたらいいかの判断がわかりやすいと大好評。ハザードマップをつかったヒヤリハットの対応から、不安の大きな保護者対応まで、これ1冊で準備できます。【評価:★★★★★】

  • 筆者紹介
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遠藤 登(安全管理研修担当)

1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始しました。2011年お昼寝中に心肺停止した園児を救うことが叶わず現在の活動に至る。株式会社保育安全のかたち代表取締役/ 保育現場のリスクマネジメントをテーマとした書籍を執筆(単著・共著ほか)

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