保育現場で使える応急手当

駅で救命行為をした受講者の報告で分かる救命講習の重要ポイント

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 LSFA-Children's CPR認定講習という応急手当プログラムを受講してくださった方から、その二日後の早朝に駅で倒れていた人の救命行為をしたと報告がありました。受講時に懸命にマネキンの胸を押してズリ剥けた手の皮は、実際の救命行為でまた剥けてしまったそうです。

(報告者Aさん)駅のホームに着くと、たくさんの人が集まって騒然としていました。どうやら緊急事態らしいことが分かって、受講したばかりだからできることがあればと、とっさに輪の中に入ろうとしましたが、まず一番に何をしたらいいかを思い出して、その場で足を止めました。

気持ちが昂ったり、咄嗟の出来事に慌ててしまうと、「受講したばかり」でも視野が狭くなったりします。自分が慌てていないか立ち止まって、場合によっては深呼吸をおススメしています。(報告から見えた応急手当の重要なポイントをお伝えします)

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ポイント:深呼吸をして自分を落ち着かせよう

(Aさん)深呼吸を数回、ゆっくりと繰り返しました。周りの景色も鮮明に見えてきました。まだ誰も何もしてないようだから、自分が率先して動こうと思ったが、けっして独りだけで全てをやろうとせずに、周りにも助けてもらおうと、ひとりひとりに声をかけはじめました。

講習を受けて、これでできるようになったと思っても、いざ事故現場に立つと、頭が真っ白になって、マネキンに対して自信をもってできたことの半分もできないことがあります。まず自分が慌ててしまっていないか気づくこと。気づくことができたら、頭真っ白のまま動き出すのではなくて、呼吸を整えてから開始をします。ぜひ周りも巻き込んで行動しましょう。

安全の確認と安全の確保をしてから動き始めます

どんな理由で人が倒れているのか分かりません。闇雲に飛び出すことで、自らも怪我をしてはいけませんね。深呼吸をして自分を落ち着かせて、自分の安全が確保できたら、そこで初めて現場に近づきます。助けたいという気持ちは大切ですが、危険がおよぶと思われるようであれば、二次災害を出さないことに努めることも大事な技能です。

安全が確認できて、傷病者に近づいたら、まず周りに声をかけて協力してくれる人を増やしましょう。お互いに気持ちを合わせるように手助けしてくれる人ばかりではありませんが、落ち着いて行動する姿を見せながら、声を出すことで行動を確認することにもつながります。

ポイント:痛ければ逃げるから迷わず押そう

(Aさん)「大丈夫ですか?」と声をかけました。どうやら反応もなく呼吸も止まっているようでした。一瞬、ためらいはしたものの、「痛ければ逃げるはず。逃げたら止めればいいから、まずは押そう」と思い直して胸を押し始めると、されるがままだったので懸命に押し続けました。

真上から強い力で胸を押されると、大人の男の人でも痛さで平気ではいられません。倒れた人が痛みを感じて逃げるぐらいの力が残っているときに押せるぐらいがよく、「絶対に呼吸が止まってる」確証がなくても、止まっているかもと迷う程度だったら胸を押し始めましょう

胸を押す目的は大切な脳を守ることにあります

胸をテンポよく、そしてつよく圧迫すると、心臓がギュッと圧縮されてポンプのように血液を全身に送り出します。血液に溶け込んだ酸素が脳内にいきわたることで救命できる可能性が高まります。今回のように大人の傷病者である場合は、心臓発作などAEDを必要とする場面であることも多いので、AEDの手配を優先して動くことも忘れないようにしましょう。

救急車は駅員さんが手配をしいてくださったそうです。心肺蘇生はあくまでも高度医療につなぐまでの間の、緊急処置として行なうものですので、誰かが呼んだか、呼んでいなければ誰が呼ぶかを明確に決めて、忘れずに119番しましょう。救急車を呼ぶと同時に、口頭指導も受けられますので、何をしたらいいか迷っていたら遠慮せずに質問をするといいでしょう。

ポイント:強く、速く押す。必要なら交代をする

(Aさん)押し始めたら、とても冷静になってきました。押している速さはどうだろう、押す深さは?想像していたよりも押す力が必要だと感じました。近くの人に交代をお願いしようとも思いましたが、救急隊が来るまでの時間を考えて自分でやりきろうと決心しました。

悪化しないように胸を押すためには、1分間に少なくとも100回より押す回数が少なくならないこと。そして胸部のもとの高さから5センチ(子どもは胸の厚みの少なくとも3分の1)より浅くならないように強く押すことを続けられることが望ましく、疲れるようなら周りの人と交代することも大事な選択です。

救命率を上げるためには受講者みなさんの力が必要です

状況に緊張していたり、生身のカラダに触れることで遠慮する気持ちが芽ばえて、マネキンに対して押したときよりも弱く押してしまうものです。テンポをとりながら、とにかく力づよく押すことに集中します。しっかり習得ができていたようでも、数か月経過してしまうと、やはり技能の質が落ちてきますので、繰り返し講習を受講することも大切です。

医療者だけができれば人の命を救えるわけではありません。現場に居合わせた人が何もしない場合と、こうして訓練を受けて、出くわしたときに実施して、迅速に救急隊につなげてくださる人がいる場合とでは、格段に救命率の向上が見受けられます。

最終:セルフマインドのコントロールをしよう

(Aさん)自分の体力と相談して今回は自分でやるべきだと決心して、救急隊が到着して交代できるまで続けました。終わってから振り返ってみると、もっとやれることがあったのではないだろうか、間違ったことをしていなかっただろうか、冷静でいたつもりでも、後から後から整理のつかない気持ちが溢れてきました。

日常生活で(特に街中で)、親族以外の方の救命行為を行なって、付き添うことがない限り、その後の結果は考えないようにします。善意の行為について責任を負えるものではありません。また反対に、起きたこと、行なったことについては家族で会ったり、友人や親しい人に話すことによって、行動した人の心理的負担を解消していただきたいと思います。

LSFA-Children’s CPR認定講習とは

乳児&小児を専門に扱った「子どもの事故と応急手当プログラム」で、消防庁の普通救命講習と同じ日本版ガイドラインを基にしてつくられています。講習は、テーマごとに繰り返し学習(練習)することで、ストレスなく応急処置のスキルが身に付きます。子どもたちは事故に合うことも少なくありません。職務としても身につけてくださることを願っています。

 L.S.F.A.はLife Supporting First Aid(命を守るための応急手当)の略称です。大切な子どもの命を守るため、そして子どもの健全な成長のために、乳児・小児を専門に扱ったプログラムで「事故防止」と「緊急時の救命/応急手当」を学びます

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  • 筆者紹介
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遠藤 登(安全管理研修担当)

1993年に保母資格と教諭免許を取得。幼稚園勤務等を経て保育所の園長職兼、子どもの傷病者対応を専門とした救命処置法の普及活動を開始しました。2011年お昼寝中に心肺停止した園児を救うことが叶わず現在の活動に至る。株式会社保育安全のかたち代表取締役/ 保育現場のリスクマネジメントをテーマとした書籍を執筆(単著・共著ほか)

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